クラフトリリース
2026.6.30

記憶に残る深いラムの香り。今治銘菓「ラムリン」をたどる時間

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お酒が入ったお菓子、好きですか。私は大好きです。

ラムボールにラムレーズン、ウイスキーボンボン。「大人のお菓子」という言葉にめっぽう弱く、見かけると気づいたらカゴに入れてしまっています。

そんな私が今回出会ったのが、愛媛県今治市の銘菓「ラムリン」。知る人ぞ知る、今治の宝ともいうべき一品です。

レトロな黄色が目を引く、愛おしいパッケージ

未開封のラムリンが3つ並んでいる画像

パッケージを手にすると、まずその愛らしさに目が留まります。アルミ包装の上から透明フィルムで包み、その表面に淡い黄色と赤文字を重ねた二層のデザイン。馬車の部分だけが透けていて、内側のアルミの質感が見えるつくりになっています。どこか懐かしく、昭和の洋菓子店の店先に並んでいそうな雰囲気です。

奇をてらわず、長く受け継がれてきたデザイン。その佇まい自体が、このお菓子の歩みを物語っているようにも感じられます。

そしてフィルム越しに、すでにほんのりと甘いラム酒の香りが漂ってきます。袋を開ける前からこの香りとは。思わず期待が高まります。

60年近い歴史と、いちど幕を引いた物語

ラムリンの歴史は、1962年(昭和37年)にまで遡ります。今治の老舗「くろふね菓舗」が開店当時から販売し、60年以上にわたり地元の人々に親しまれてきたお菓子です。全国菓子大博覧会で名誉大賞や技術優秀賞を受賞するなど、その品質の高さでも知られていました。

しかし2021年、後継者不足を理由に「くろふね菓舗」は静かに閉店。長く続いてきた歴史に幕が下ろされ、ラムリンも製造終了となりました。

それでも、この銘菓が完全に消えることはありませんでした。今治市内の菓子問屋「アリスタ・木曽」が製法を受け継ぎ、試行錯誤の末に復刻版を完成。2022年からは「株式会社いと・をかし」が製造を担い、再び今治の銘菓として歩み始めています。

一度は途絶えかけた味が、誰かの「残したい」という思いによってつなぎ直されている。その背景を知ると、目の前のひとつにも、少し違った重みを感じます。

アルミの包みから滲み出る、ラム酒の予感

外装フィルムを取り除くと、中から現れるのはアルミホイルに包まれた個包装のラムリン本体。銀色のアルミ包みをよく見ると、シロップが少し滲み出ているのが分かります。これだけシロップがたっぷりと染み込んでいるのかと思うと、開ける前から幸せな気持ちになります。

アルミホイルを外したラムリンの画像

アルミをそっと開くと、ほわっと甘くリッチなラム酒の香りが広がります。外見はカステラのようなスポンジ生地で、シロップをたっぷり含んでしっとりとしています。サイズ感はひと口よりやや大きめ、手のひらに収まるくらい。素朴でどこか温かみのある見た目です。

口の中でとろける、贅沢なしっとり感

一口食べて、まず驚いたのはその柔らかさです。

噛むというよりも、ふわりと溶けていく感覚。ラム酒のシロップが隅々まで染み渡り、スポンジ生地がとにかくしっとりしています。バターをたっぷり使って作られているため、口溶けがなめらかで上品。甘みの中にラム酒のほろ苦さと芳醇な香りが絶妙に絡み合い、まさに「大人のお菓子」と呼びたくなる味わいです。

ラムケーキというと、お酒の量がほどほどで食べやすくまとめられているものが多いですが、ラムリンは違います。ちゃんとラム酒が効いています。それでいてくどくなく、後味はすっきり。バターと卵の豊かな風味が土台にしっかりあるから、ラム酒の個性がちゃんと受け止められているのです。

お酒好きにはむしろそのくらいがちょうどいい。甘さとアルコールのバランスが見事な一品です。コーヒーとの相性も抜群で、ブラックの苦みがラム酒の甘さをきれいに引き立ててくれます。

焼いたら、また別の顔を見せてくれた

「焼いて食べてもおいしい」という噂を耳にしていたので、ぜひ試してみることにしました。

ここで嬉しい発見がひとつ。アルミホイルの包装のまま広げてトースターに入れられるので、アルミホイルをあらためて用意する手間がいりません。面倒くさがりには地味にありがたいポイントです。

トースターでラムリンを焼いている画像

取り出してみると、焼く前と比べてひとまわりふわっとした印象で、香りも変化しています。ラム酒の芳香に加えて、バターと卵が焼けた甘い香りが加わり、より食欲をそそる仕上がりに。

食べてみると、しっとり感は保ちながらも少し水分が抜けて、ほんわりとした軽さが生まれています。そのまま食べるとじゅわっとシロップが広がるのに対し、焼くとふわっと優しい口当たりになる。同じ生地とは思えないほど表情が変わります。

しっかりラム酒を感じたい夜はそのまま、ふわっと軽い感じで楽しみたいおやつタイムには焼いて。二通りの楽しみ方ができるというのも、ラムリンの魅力のひとつです。

今治という港町と、ラムリンのあいだにある時間

今治市は、しまなみ海道の愛媛側の玄関口にあたる港町です。造船業と今治タオルで知られ、瀬戸内海の穏やかな景色と、昭和の面影を残す商店街が共存しています。

なぜ今治でラム菓子なのか。明確な由来が語られているわけではありません。

ただ、瀬戸内の港町である今治と、かつて「海の男の酒」とも呼ばれたラム酒。そのイメージがどこかで重なったとしても、不思議ではないように思えます。

しまなみ海道と造船所の画像

そんな土地で60年近く愛されてきたラムリンには、地元の人たちにとっての「記憶の味」が息づいています。
「子どもの頃はラム酒が苦手だったけれど、大人になって好きになった」という声も多く聞かれる洋酒入りのお菓子。お酒の味がわかるようになった頃、ふと思い出して手に取りたくなる。そんな存在は、そう多くありません。

一度は途絶えかけたこの味が、「残したい」という思いによって受け継がれ、いま再びつくられている。その背景を知ると、ひと口ごとの印象も少し変わって感じられます。

今治は、KURAFTを運営するサンブロードバンドの本社がある場所でもあります。2025年3月に発生した大規模な山林火災は、今治に大きな被害をもたらしました。直接被災しなかった地域の人々も心を痛め、復興に向けてみんなで動いてきました。 だからこそ、この土地で長く愛されてきた味がこれからも変わらず続いてほしい。そんな思いが自然と湧いてきます。

ふるさと納税の返礼品として手に入るのも、このお菓子ならではの楽しみ方のひとつ。今治を応援する気持ちとともに味わえば、レトロな黄色いパッケージやラム酒の香りも、より深く記憶に残る気がしました。

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もっと知りたいあなたへ

株式会社アリスタ・木曽
https://www.aristakiso.com/

本記事は筆者の見解・体験に基づくものであり、一部一般的な情報や公開資料を参考にしています。

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