逸品を東京で味わう——東京のアンテナショップを巡り、地方の隠れた名品を実食レビューで紹介するシリーズ。今回は長崎県・琴海堂の「和三盆糖かすてら」をお届けします。
長崎といえば、カステラを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。ふんわりとした食感とやさしい甘さは、どこか懐かしさを感じさせてくれる存在です。お土産としても定番で、一度は口にしたことがある方も多いはずです。
そんな身近なお菓子だからこそ、「どれも似たようなもの」と感じている方もいるかもしれません。
しかし、その中でも「これは特別」と感じさせてくれる一品に出会いました。今回ご紹介するのは、ひと口食べた瞬間にその印象を大きく塗り替えてくれた、琴海堂の「長崎和三盆糖かすてら」です。これまでのカステラのイメージをやさしく裏切りながらも、どこか王道の安心感もある――そんな魅力を持った味わいについて、じっくりレビューしていきたいと思います。
長崎カステラの歴史
カステラの魅力を語るうえで、その起源や歴史にも少し触れておきたいところです。
カステラのルーツについては諸説あり、スペインの焼き菓子「ビスコチョ」に由来するという説や、ポルトガルの焼き菓子「パン・デ・ロー」がもとになったという説が知られており、いずれもヨーロッパから伝わった南蛮菓子が原型であると考えられています。
日本にカステラが伝わったのは、室町時代の終わりごろ。開港したばかりの長崎港にポルトガル人が来航したことがきっかけとされています。異国の文化とともに伝えられたこのお菓子は、当時の人々にとって非常に珍しい存在だったことでしょう。
現在「長崎カステラ」は、長崎県長崎市を代表する特産品のひとつであり、長崎県菓子工業組合によって地域団体商標も取得されています。長崎でカステラが発展した背景には、江戸時代の鎖国下においても貿易港として開かれていたこと、そして砂糖の集散地であったことが大きく関係しています。
こうした長い歴史と風土の中で育まれてきたカステラ。その一切れには、異国から伝わった文化と、日本の中で磨かれてきた技術の積み重ねが詰まっているのかもしれません。
琴海堂のこだわり
今回ご紹介するのは、長崎市西海町に工房を構える「琴海堂」。特別なカステラを焼き上げる、知る人ぞ知る隠れた銘店です。
長崎伝統の味を大切にしながら、原料と製法に強いこだわりを持ち、熟練の職人が昔ながらの製法で一つひとつ丁寧に焼き上げています。そのため大量生産は行わず、一日数量限定の「特別なかすてら」となっています。
素材にも徹底したこだわりがあり、極上の和三盆糖、佐賀県産の特級純糯米水飴、そして長崎県産の太陽卵を使用。シンプルだからこそ、素材の良さがきわ立ちます。
製造工程の中でも重要なのが「泡切り」と呼ばれる作業です。回数や力加減は秘伝とされており、しっとり感やきめ細かさを左右するため、すべて手作業で行われています。さらに、季節や温度に応じて調整される粗熱取りや、焼き加減の見極めなど、随所に職人技が光ります。
和三盆を限界まで使用しているため焼き上げは非常に難しく、約1時間30分かけてじっくりと焼き上げられるのも特徴です。最後にザラメを確認し、一つひとつ丁寧にカットされて完成します。
公式サイトの動画ではその製造風景を見ることができますが、手作業にこだわる姿には思わず引き込まれました。ここまで丁寧に作られたカステラ、味への期待も自然と高まります。
実食
さて、いよいよ実食です。まずはパッケージから見ていきます。

箱は金色を基調としたデザインで、光を受けて上品に輝いています。手に取った瞬間から高級感が伝わり、一般的なカステラとは一線を画す「特別感」を感じさせてくれます。さらに、箱には長崎カステラ認定証と和三盆糖のシールが貼られており、見た目だけでも品質や素材へのこだわりがしっかりと伝わってきます。

箱を少し傾けてみると、見た目以上にずっしりとした重みがあることに気づきます。この重厚感から、中身がしっかり詰まっていることが想像でき、期待がさらに高まります。

外袋から取り出すと、箱の中に丁寧に収められたカステラが現れます。「手焼き一筋」と書かれた金色のシールが貼られており、職人のこだわりと自信が感じられます。また、箱にはいくつか小さな穴が空いており、おそらく焼きたてのカステラを適切に冷ますための工夫なのだろうと感じました。カステラには直接触れることもできますが、なるべく形を崩さないように慎重に開封していきます。
いざ内箱を開けてみると、思わず「きれい」と声が出てしまうほどの美しさが広がります。

焼き色のコントラストが美しく、全体に統一感があり、一つひとつが丁寧にカットされているのが分かります。見た目だけでも完成度の高さが伝わり、この時点で味への期待はかなり高まりました。
お皿に盛り付けて食べていきます!

まず裏側の紙をそっと剥がしてみると、紙越しにも分かるほどの大粒のザラメがしっかりと付いていることに驚きます。ひと口食べてみると、生地はふんわり軽いというよりは、しっかりとしていて弾力がある食感で食べ応えがあります。
噛み進めるごとに、卵や砂糖といった素材のやさしい甘みがじんわりと広がり、口の中に深いコクが残ります。しっかり甘さは感じるものの、和三盆糖を使用しているためか、くどさがなく非常に上品な甘みで、後味もすっきりしています。
そして底のザラメ部分を味わうと、ジュワッと濃厚な甘みが口いっぱいに広がります。一般的なザラメのシャリっとした食感とは異なり、しっとりとした口当たりなのも印象的です。このザラメと生地を一緒に食べることで、甘みと食感のバランスが絶妙になり、最後まで飽きることなく楽しむことができます。
全体を通して、「これまでのカステラのイメージをやさしく覆してくれる一品」という印象でした。しっかりとした満足感がありながらも上品で食べやすく、まさに特別な一品と呼ぶにふさわしい味わいです。
琴海堂のかすてらは今回食べたもの以外にも、「そのぎ茶」かすてらや「七三焼」などもあり、今回食べた和三盆糖かすてらは0.5号でしたが、0.5号~4号とさまざまな大きさがあるようです。
是非一度、特別なかすてらを手に取ってみてください。
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もっと知りたいあなたへ
琴海堂
https://kinkaidou.com/
長崎県菓子工業組合
http://www.nagasaki-kashi.net/lowsuit.php
本記事は筆者の見解・体験に基づくものであり、一部一般的な情報や公開資料を参考にしています。