クラフトリリース
2026.4.23

あらためて出会う、唐津(4)~香りの源流をたどるTHREE呼子蒸留所~

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今回訪れたのは、佐賀県唐津市・呼子(よぶこ)にある「THREE呼子蒸留所」。

自然由来の原料にこだわり、心・からだ・肌のバランスに寄り添うプロダクトを展開するTHREE(スリー)。その思想は単なるスキンケアにとどまらず、「香り」を通して人と自然をつなぐことにも向けられている。

「THREE呼子蒸留所」は、そのTHREEの思想を体現する場所として、アロマディフューザークラフトや精油蒸留の体験を、ここ呼子で提供している。

原料の栽培から蒸留、そして体験へ——香りが生まれる現場に触れながら、その背景にある想いを取材した。

佐賀・呼子に生まれた理由

呼子蒸留所内の大きなタンクにハーブが入れられる様子の画像

THREE呼子蒸留所が担うのは、単なる製造拠点ではない。ここでは「苗づくりから収穫、蒸留、研究まで 。」という 精油創りをモットーに、「自分たちの手で香りをつくる」という挑戦が続けられている。

その背景には、精油の品質への強いこだわりがある。

精油は、収穫から蒸留までに時間が空くことで、香りが理想から離れてしまったり、抽出量が変動するという課題がある。

だからこそなるべくフレッシュな状態で「収穫から24時間以内に蒸留する」という条件を満たすため、ハーブガーデンと蒸留所を併設することが必要となった。

2022年に佐賀県内でハーブ栽培が始まり、その後、蒸留所の構想が具体化。選ばれたのが、呼子朝市通りに面する古民家だった。かつての町家を改装し、蒸留器と研究ラボを備えたこの場所は、単なる工場ではなく、香りが生まれる背景や過程を体感できる空間として設計されている。

また、農家と協働しながら、自社スタッフが畑づくりや収穫に関わる点も特徴的だ。本社・東京のスタッフも現地に足を運び、土砂降りの中で土を耕すこともあるということには驚いた。

日常的にPCに向かう社員も含め、原料の原点に立ち返る——その姿勢こそが、この場所の根幹にある。

この蒸留所は、国産精油の可能性を探る拠点でもある。「国内でも自分たちで精油の生産ができないか」という想いから始まった取り組みは、香りが生まれる背景そのものを体験として伝える場へと発展している。

呼子朝市に溶け込む蒸留所の風景

平日でも観光客でにぎわう呼子朝市通り。その一角に、THREE呼子蒸留所はある。賑わいの中にありながら、どこか落ち着いた空気をまとっているのが印象的だ。

外観は、昔ながらの町家の趣をそのまま残した佇まい。周囲の街並みに自然と溶け込み、2025年10月にオープンしてからまだわずかであるが、すでにこの土地に根づいている空気を感じさせる。

扉を開けると、まずふわりと漂うハーブの香りが、五感をやさしく引き込んでいく。

そして視線の先には、大きな蒸留タンクの姿。シックで落ち着いた内装の中に据えられたその存在は、この場所が「香りを生み出す現場」であることを静かに物語る。

呼子蒸留所内の大きなタンクの画像

建物の下階には研究スペースがあり、日々精油の分析や検証が行われている。そして階段を上がると、そこには精油が整然と並ぶカウンターが広がる。そのひとつひとつに、土地や季節の記憶が閉じ込められているようだ。

地域とともに香りを育てる、呼子の町興しと連動

呼子蒸留所のもう一つの魅力は、地域との距離の近さにある。観光地として知られる呼子朝市通りに位置し、地元の人々と自然に関わりながら運営されている。

古民家を改装した蒸留所は、「鯨の町興し」プロジェクトの一環として生まれたものでもある。地域の人々のサポートを受けながら、街並みの風情を残しつつ新しい価値を重ねていく。

地域の人々は新しく生まれたこの場所を、自分ごとのように紹介してくれるという。その姿は、単なる商業施設ではなく、町興しの一環として受け入れられている証ともいえる。

実際に、同じ呼子の町興しから生まれたサウナ施設「JIN6サウナ」へは、蒸留したハーブウォーターをロウリュ用に提供。香りを通じて、地域の中で新たな循環が生まれている。

また、朝市ならではの文化も興味深い。店舗同士が営業時間を把握し合い、「この時間ならあそこが開いているよ」と自然に案内し合う関係性がある。こうした緩やかなつながりもまた、この土地ならではの魅力だ。

販売から蒸留へ、ひとりの想いが導いたキャリア

呼子蒸留所のスタッフ岩下さんの画像

この蒸留所を任されている岩下さんは、鹿児島のTHREE店舗で約10年間販売員として経験を積んできた。接客を通じて香りに触れるなかで、「原料が好き」「原料そのものに関わりたい」という想いが強くなり、蒸留にも関心を持つようになったと語る。

趣味としても蒸留に触れ、実際に蒸留所を手伝う中で経験を重ねた結果、その想いが実を結び、呼子蒸留所の立ち上げに携わることとなった。

百貨店での接客が1対1だったのに対し、呼子では1対10になることもある。観光地ならではのダイナミックな接客スタイルは大きな変化だったという。また、地域との関係性の中で生まれる会話も、これまでとは異なる魅力のひとつだ。

一方で、最も大きな苦労は「自然と向き合うこと」。

プライベートでは簡単に思えたハーブ栽培は、実際には大変なことだった。何千株ものハーブが枯れてしまうこともあり、精油と農業の両面に向き合う難しさを実感している。

それでも植物と関わる日々は、岩下さんにとって何よりのやりがいとなっている。

佐賀で育つハーブと香りの個性

佐賀県玄海町から唐津市に広がるハーブを栽培する畑の画像

ハーブが育つのは、佐賀県の玄海町から唐津市に広がる上場台地(うわばだいち)。水はけがよく、降雨量が少なく、海風が通るこの土地は、樹木系ハーブの栽培に適している。昼夜の寒暖差も品質に影響し、同じ植物でも香りに個性が生まれる。

例えばローズマリーは、熊本産と比べて、佐賀ではより甘みを帯びた香りになるという。

ここで育つユーカリグロブルス、コモンタイム、ティーツリー、ロザリーナなどのハーブは、単なる原料ではなく、土地の風土そのものを映し出す存在だ。

呼子で人気のディフューザークラフト体験

呼子蒸留所で体験できるアロマディフューザークラフトの画像

呼子蒸留所で特に人気を集めているのが、アロマブレンド ディフューザー クラフト体験だ。予約枠を増やしてもすぐに満席になるほどの人気で、リピーターも多いという。

季節などで変わる「ベースノート」とマインドから選ぶ「カスタムノート」からそれぞれ1つずつ香りを選び、自分だけのブレンドをつくる。

実際に体験すると、どの香りもそれぞれに魅力があり、ひとつに絞るのに思わず迷ってしまう。

ベースノートの4種は、朝の空気のような清々しさのある「石」、みずみずしいフローラルジューシーな「花」、ほのかにフレッシュなハーバルフローラルの「花 -SAKURA-」(花の2種は季節限定、現在は終了)、そして、深みのあるグリーンとフルーティさのある「呼子」——それぞれを組み合わせながら完成形を想像する時間も、この体験の楽しさのひとつだ。

中でも、呼子限定のベースノートは多くの人を惹きつけている。現に私もこの香りを選んだひとりである。

印象的だったのは、スタッフの方が香りの特徴や組み合わせ方を丁寧に教えてくれること。初めてでも安心して楽しめるよう寄り添ってくれるため、香りに詳しくなくても自然と自分好みの一本にたどり着くことができる。

この体験は東京の日比谷店などでも提供されているが、呼子では「その場で蒸留された香り」に触れられる点が大きく異なる。香りを選ぶだけでなく、その背景にあるストーリーを感じながらつくる時間は、ここならではの価値だ。

香りの新しい楽しみ方とこれから

佐賀県産ハーブを使用した商品の画像

今後はワークショップの継続に加え、蒸留体験やハーブ収穫体験なども検討されている。現在、佐賀県産ハーブを使用した商品はハンドケアとボディケアに限られているが、2026年5月15日に発売される基幹スキンケアのバランシング クリア シリーズにも配合され、今後さらにラインナップが広がっていく予定だ。

呼子蒸留所限定で展開されているハーブアイスミルクも、訪れたらぜひ味わいたいもののひとつ。

香りは冷たく湿度の低いところでは香りを感じにくく、温かく湿度のある環境では香りを感じやすいもの。

自社農園で育てた植物の香りを閉じ込めたアイスは、口に入れた瞬間にふわりと香りが広がる、新しい楽しみ方だ。

THREE呼子蒸留所は、商品を「買う」場所から「知る」「体験する」場所へと進化し続けている。香りが生まれる背景に触れることで、日常に取り入れる一滴の意味はきっと変わるはずだ。

呼子を訪れる理由がひとつ増える——そんな場所として、一度体験してみてほしい。

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もっと知りたいあなたへ

THREE Aroma Distillery 呼子蒸留所
https://www.threecosmetics.com/shop/three-aroma-distillery/

本記事は筆者の見解・体験に基づくものであり、一部一般的な情報や公開資料を参考にしています。

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