ENJOY ENGINEERING!!
楽しくなければ、仕事じゃない。
株式会社AD5が大切にしているのは、仕事の進め方や会社のあり方を、それぞれが自律して考え、判断できることだ。役職や上下関係を設けず、自分たちで組織をつくっていく。一方、自律とは何でも一人でできることではない。障害の有無にかかわらず、誰にでも得意なことと苦手なことがある。自分の弱さを認められることも、一つの強さと捉えている。片岡社長と友藤役員に、仕事を楽しむことを軸にした組織づくりについて話を聞いた。
Q1:企業について教えてください。
大阪でシステム開発をしている、メンバー11名ほどの会社です。お客様は企業で、給与管理や在庫管理など、社内の仕事をより便利にするためのシステムを、「こんなことで困っている」というご相談から一緒に考え、作らせていただくのが典型的なパターンです。金融機関向けのアプリ、学校の集金をオンラインで完結できる仕組みなど、お客様の業種も、作るものも多岐にわたります。
Q2:経営理念「ENJOY ENGINEERING!!」には、どのような想いが込められているのでしょうか。
誰しも人生のかなりの時間を仕事に費やします。その時間をお金のためだけに耐えるのか、楽しめるのかで、人生の豊かさは変わってくる。だから、仕事が楽しいものであり続けられる会社にしたい。それが出発点でした。
仕事が楽しくなる要素の中でも、「誰と一緒に働くか」は大きい。だから、一人ひとりが「この人と一緒に働きたい」と思ってもらえる存在でありたい。
会社として大切にしている考え方は、「コーポレートデザイン」として文章にまとめています。一人ひとりが何を大事にしながら会社をつくっていくのかを示したものです。
人にはそれぞれ、得意なことと苦手なことがあります。障害もその一つで、特別に切り分けて考えているわけではありません。「関係ない、一緒だよね」という感覚です。だから正直に言えば、障害者雇用をしようと思ったこともないし、したとも思っていません。
Q3:「楽しみ」を、権限ごと手渡すという考え方は、組織のあり方にどう表れているのでしょうか。
うちは階層を一切設けない、フラットな組織です。それぞれが自分で判断し、会社や仕事について自由に提案できるようにしています。
その出発点にあるのは、独立してからの仕事がすごく楽しかったことです。誰と一緒に働くか、どんな仕事をするか、あるいはしないかまで、自分で決めることができた。そうやって自分で選び、決められることが、仕事の楽しさにつながっていました。でも、それは代表だからこそ享受できる楽しみでもある。だったら、みんなにも同じように権限を渡していけば、みんなが仕事を楽しめるんじゃないか。そこから組織づくりを始めました。
ただ、自分で判断するには、「何を大事にするのか」という共通のよりどころが必要です。「コーポレートデザイン」は、その判断の基準にもなっています。一人ひとりが経営理念を咀嚼し、自分の言葉で説明することで、単なるきれいごとにしないようにしています。
例えば、備品の購入に申請は必要ありません。上限はありますが、各自の判断で決裁できます。決算もすべて公開しています。
例えば「タワーマンションで仕事をしたい」となっても、売り上げや利益が分かっているので、「それをやったら自分たちの使えるお金がこれくらい減る」と理解したうえで判断することになります。
どれだけ良い環境が用意されていても、与えられたものとして受け取るだけでは、自分たちで選んだという感覚は持ちにくい。「この人数なら、この範囲で」と自分たちで決めれば、それは与えられたものではなく、自分たちで選び取ったものになる。納得感も違ってきます。
Q3-2:権限を渡せば、人は自然に動き出すものなのでしょうか。
実は、権限を渡しただけで人が動き出すわけではありません。自分の責任で判断し、自分の考えを出すことは、そんなに簡単ではない。
そのため、変化を促すきっかけは意識してつくってきました。定期的なミーティングや委員会のほか、誰でもテキストで自由に提案できる仕組みもあります。社員の提案をきっかけに、現在は週1回のリモートワークも試しています。社内でスポーツイベントをやりたい、Tシャツを作りたいといった提案が出ることもあります。
声に出して提案するのが苦手な人でも、テキストなら書ける。発言が苦手でも、何の問題もありません。
判断に迷うときは、五分五分ならまずはやってみる。1回試して、そこから考えるというスタンスです。

Q4:どのように採用しているのでしょうか。
働くうえで共通して大切にしていることがあります。誰に対しても同じように接すること。感謝の気持ちを持ち、お互いさまの精神で助け合えること。自分の弱いところを認めたうえで、自分のできることで人を助けられることです。障害のある人も、ない人も同じです。
面接は、代表以外の社員全員で行います。それぞれが自由に質問し、判断基準は「その人と一緒に働きたいか」。採用の決定権は社長ではなく、実際に一緒に働く社員にあります。
技術は未経験でも採用しています。プログラムを書く仕事は、合わない人にはどうしても合わない。だから確かめるのは、書くことが「好きかどうか」です。独学でもある程度やってきたか、本人が「好きだ」と分かっているか。そこが確認できれば、時間はかかっても技術は何とかなると考えています。技術を急かすことはありません。それよりも、会社の文化との相性を大切にしています。
Aさんの面接も印象に残っています。Aさんは発達障害があり、面接の場で「自分はこういうことが苦手です」と、自分から伝えてくれました。自分の弱いところを隠さずに話すことは、なかなかできることではありません。そこに、私たちが大切にしているものや、その人のポテンシャルが見えた気がしました。
Q5:評価や給与はどう決めているのでしょうか。
システムを作る「テクニカルスキル」と、問題解決力やコミュニケーション力などの「ヒューマンスキル」の2軸でスキルシートを作り、給与を決めています。
年功や「ここまでいかないと上には上がれない」といった段階は設けていません。すべてを平均的に身につけることを求めているわけでもない。「この分野は苦手」があってもいい。その代わり、「自分はこれが得意だ」というところで力を発揮してくれたらいい。難しいところは「お願いします」「ありがとう」と言い合える。そういう組織の方が強いと考えています。
最終的には、給与も一人ひとりが自分の働き方に合わせて考えられるようにしたい。子育てなどのライフイベントに合わせて「今年は控えめに」でもいいし、「落ち着いたので、またフルで」でもいい。階層的な組織では、マネジメント職の人が「一旦戻ります」とはなかなか言えません。そういうことも含めて、自分たちで決めていけるようにしたいと考えています。
Q6:なぜ「弱みをさらけ出す」ことを、そこまで大事にしているのでしょうか。
フラットな組織は、実はすごく脆いものです。入社1年目でも、ベテランに同じようにものが言える。でも、人の上に立とうとする人が一人いても崩れるし、逆に誰かの下にいたい人がいてもバランスが取れなくなる。
自分の弱さを見せられず、「自分はできる」と見せ続けようとすると、鎧をかぶることになる。そうすると、指摘を受けても認められない。認めれば成長できるのに、拒否したり、相手への攻撃に変わったりすることもあります。
これは自己肯定感の話に近いかもしれません。何かができるから自分を肯定できる、ということではなく、できることもできないことも含めて、今の自分を受け入れられること。弱いところを見せても、自分の価値まで揺らがない。それは一つの強さだと思っています。
「さらけ出す」とは、何でもオープンにすることではありません。人からどう見られるかに左右されず、自分を必要以上によく見せなくていい。そうであれば、人との間に上下をつくる必要もなくなる。今お話ししていることも、誰か一人の考えではなく、みんなで考える中から出てきたものです。
(後編へ続く)
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