思い立ったが吉日、ちょっとそこまでの旅〜栃木県佐野市(後編)〜
朝昼兼用、佐野といえばラーメンをやはり食べよう
前日は豪雨の洗礼を受けつつも、友人の幼馴染の店などを3軒回るはしご酒をし、佐野のナイトライフを堪能したわれわれ。翌朝は少し寝坊をして、11時にチェックアウトした。
普段ラーメンを積極的には食べないのだが、さすがに佐野に来て食べないのも片手落ちのような気がし、名物の佐野ラーメンをランチにすることにした。
車を少し走らせて向かったのは「めん一番」、勘の働く方ならお気づきかもしれないが、ここも友人の同級生が経営する店だ。
店は11時30分からの営業のため、駐車場で開店まで5分ほど待ったが、どんどん客が入ってくる。
若い男性店員がドアを開けて「お待たせしました!いらっしゃいませ」と並ぶ人を店内へ誘導している。われわれも急いで車を降り、店内の2人掛け席へと案内された。
ラーメンはもちろんのこと、チャーハンがおいしいと評判の店ゆえ、2人ともランチセットのラーメン&チャーハンセットに即決。
店にはどんどんと客が入り、あっという間にカウンターまで満席になった。
待ち時間の間に、友人が厨房の中の店主と目が合ったらしく、店主の小山さんが席まで来てくれた。人懐っこい笑顔が素敵な方である。
そして、やはりここでも近況のキャッチアップ大会。同級生ネットワーク恐るべしである。
小山さんは家族でこのお店を切り盛りしており、なんと息子さんの奥さんは今日が予定日という臨月であった(その数日後、無事に小山さんの8人目のお孫さんが誕生した)。

そうこうしているうちに運ばれてきたラーメンとチャーハン。
シンプルにナルトとチャーシュー、メンマが載った醤油ラーメンと、紅生姜と卵、ネギの彩りがきれいなパラパラチャーハンに大根の漬物。そしてサラダである。
ラーメンを評価できるほど食べつけていないのだが、太めの多加水麺がモチモチしており、チャーシューもスープも優しい味わい。私は醤油が好きなのでとても気に入った。
チャーハンはかなり評判が高く、厨房からは常に中華鍋とオタマがぶつかるカンカンという音が聞こえてくる。それだけ皆が注文する人気商品なのだ。
あまり量を食べられない人間であるけれど、ペロリと完食できてしまった。
とはいえ、やはり満腹すぎて動くのが大儀である。食べ過ぎは良くないが、旅先のおいしいものは積極的にいきたいところ。この満腹は仕方のないことである。
佐野のソウルフードを道の駅で食べる

ぱんぱんの胃袋を抱えつつも、この後も行くべきところがあるのだ。
次なる目的地は、「道の駅 どまんなか たぬま」である。道の駅といえば、産直の野菜や、地元の名店の菓子や名産品が集まっている。どこを訪ねてもおいしそうなものが集まっているので、いつもフラフラと色々なものに惹かれてしまうのは私だけではあるまい。
しかし、今回は買うものが決まっているので迷わず直行できるのだ。
佐野ラーメンの他に、佐野の人々が誇りに思っている食べ物がある。
それが、ソウルフード「いもフライ」だ。
蒸したジャガイモを串に刺してパン粉の衣をつけて揚げた後、ソースにドボンと浸す。佐野市内のメーカーが作る特製ソースは独特の甘みがあり、「いもフライといえばこのソース!」なのだと友人も力説していたが、このソースも道の駅で売られていた。

市内にはいくつも「いもフライ」の店があり、誰もが「ここがおいしい、ここが好き」という店を持っている。前夜に色々な人にリサーチしたが、数点の別の店の名が上がった。
今回は限られた時間の中で、効率よく回るルートにあったこの道の駅にある店で購入することにしたのだ。
お腹はいっぱいなのだが、温かいうちに食べるのがおいしいわけで、これまた栃木名物の「レモン牛乳」とともに、外のテーブルで頬張った。確かにこれはソウルフードと呼ばれる、いわゆるB級グルメ的なものだ。シンプルにおいしい。憧れていたレモン牛乳も当然おいしい。でもお腹は本当にはちきれんばかりになった。
そして、個人的にはこの2つは組み合わせなくてもよかったと後悔した。お茶かお水にしておく方がよいと思う。
実はこの他にも、産直の野菜をちょっとだけ購入してしまった。
道の駅に来て、新鮮でお買い得な野菜を買わない手はないぞと、万願寺とうがらしとオクラだけ買って満足した。
観光もちょっとする〜唐澤山神社の水琴窟を聴きに行く〜

「道の駅 どまんなか たぬま」から、北東に車でほんの5分ほど。
佐野市国際クリケット場の前を通り、山に入っていくとその山頂に唐澤山神社がある。
ここに水琴窟(すいきんくつ)があるというので、爽やかな音色を聴きに行くことになった。
ここでちょっと脱線するのだが、佐野市は「クリケットのまち」として絶賛売り出し中なのだそうだ。日本のクリケットの聖地を目指しているという。
現在、日本クリケット協会が佐野市に拠点を置いていること、2013年には廃校となった県立田沼高校の跡地を利用して、2016年に国内唯一の本格的な天然芝ピッチを備える佐野市国際クリケット場が整備されたことで、クリケットを用いたまちづくりプロジェクトが進行している。
知らないことがたくさんあるものだ。
本当にたくさんの素敵な事業、想い、人々の活動が各地にある。KURAFTでは小さな取り組みにも光を当てていきたい。小さな旅をして、そういうものを見つけたい。
そんなことを改めて思いつつ、話を戻して唐澤山へと向かう。
道は、クリケット場を過ぎると途端に山の中に吸い込まれる。
夏の木々が鬱蒼と繁り、道も狭くなる。運転は友人がしてくれているので快適ではあるが、ちょっとした九十九折りの山道は急に遠くに連れてこられたような気分になる。
5分ほど登ると、急に視界が開けた。広い駐車場だ。
普段はレストハウスが営業しているようだが、休みなのか閉まっている。停まっている数台の車の横に車を停めて、いざ唐澤山神社へ向かおう。

歩みを進めると、道は「ますがた」という石垣のクランクになっており、これは唐澤山城の城門跡。この「くいちがい」とも呼ばれる90度に曲がる入口が、まさに城だと感じさせる風情を醸し出している。
さらに歩くと、森の中に大炊井(おおいのい)という井戸があった。周りが池のようになっていて、その深さが9mもある。この井戸は築城の際から今日まで枯れたことがないのだそうだ。
石段を上がると、左右に道がある開けたところに出た。
何となく視線を感じるなあと見渡すと、そこかしこに猫がいる。野良猫のようだが、皆大人しく、暑さに辟易してか、少しでも冷たいところを探して寝そべり、涼を取りつつ昼寝をしているようだ。
後から分かったことだが、この神社は猫好きには有名な「猫に出会える神社」であった。実際、この猫達は近づいても逃げることなく、やる気のない感じで撫でさせてくれる。野良ではあるものの、汚くはない(撫でたい方は自己責任で)。

しばらくして、猫を撫でに来たのではないと気づいたわれわれは、水琴窟へと急ぐことに。
しかし、急がずとも拍子抜けするほどすぐ目の前にあった。水琴窟「天慶夢(てんけいむ)」である。ここにあると知らなければ通り過ぎてしまうような小さな蹲(つくばい)が、それであった。いや、地味すぎる。
しかし気を取り直し、その音色を聴いてみることに。
柄杓(ひしゃく)を手にして、水を右手の小石の敷かれた上に流し、蹲の下にさしこまれた竹の筒に耳を当てると——微かに聴こえる水の落ちる音。音程ともいえないほどの違いの不思議な音色が細く聴こえてきた。
周囲の木々にいる蝉の声が大きく、水琴窟の音を聴くのには集中力が必要なのが玉に瑕ではあるが、その音色をしばらく2人で楽しんだ。
ところで、今さらながら水琴窟とは何かご存じだろうか。
簡単にいうと、地中に埋めた瓶(かめ)の中で水滴が落ちる音を反響させ、琴のような美しい音色を楽しむ日本庭園の仕掛けである。江戸時代中頃に庭師によって考案されたものだそうだが、一時期衰退して姿を消したものの、昭和の終わり頃からまた注目をあつめるようになったという。
この天慶夢は、同神社の歴史に深く関わる、939年から940年に起きた天慶の乱(てんぎょうのらん / てんけいのらん)や、藤原秀郷の歴史的ロマンにちなんで名付けられている。
そして、佐野エリアには30近い水琴窟があり、これは全国でも有数を誇り「水琴窟のまち」としても知られているのだとか。これは実は友人も知らなかったことだ。
ちょっとそこまでの旅の楽しみを見つけに行こう

涼やかな音色を楽しみ、猫に再びちょっかいを出し癒され、唐澤山神社を後にする。
帰りは来た道とは反対側へ向かうと、佐野市街方面に降りられるようだった。往路の九十九折りよりは若干少なめのターン数で下界へと導かれた。
後から地図を見て知ったことだが、この辺りには城郭のない城跡が点在している。城址好きには面白い場所かもしれない。
佐野市内を抜け、都内西部の自宅に戻るべく(JR湘南新宿ラインへの乗り換えが楽な)群馬県は東武伊勢崎線の館林駅へ向かう。
滞在時間はほぼ24時間の栃木県佐野市の旅、食べて飲んでがメインの1泊2日であったが、充実していた。
有名な目的地ではないが、その土地に縁のある人に案内してもらったり、1人でも気軽に出かけてみたりする「ちょっとそこまでの旅」。
知らなかったことを知り、土地土地の名物を食べ、土地の人と触れ合う。
そんな旅の醍醐味を、気軽に気楽に味わってみよう。
そんな気持ちで「ちょっとそこまでの旅」を気負わずに続けていきたい。
前編はこちら
―――
もっと知りたいあなたへ
佐野市観光協会
https://sano-kankokk.jp/
唐澤山神社
http://karasawayama.com/
道の駅 どまんなかたぬま
https://domannaka.co.jp/
本記事は筆者の見解・体験に基づくものであり、一部一般的な情報や公開資料を参考にしています。