グリーンカーテンの効果とは?ゴーヤやアサガオが広げる夏の涼の知恵
窓の外にゴーヤの葉がびっしりと茂り、朝の光をやわらかく透かしている――そんな光景を夏の街角で見かけることが増えました。年々厳しさを増す日本の夏の暑さを前に、エアコンだけに頼らず涼をとる工夫として、グリーンカーテンはいまや夏の風物詩として定着しつつあります。家庭のベランダはもちろん、学校や公民館、市役所などの公共施設でも広く取り入れられ、電気代の節約につながるだけでなく、景観にも彩りを添える取り組みとして親しまれてきました。
始まりは温暖化への関心、広がりは震災後の節電意識から
グリーンカーテンという工夫そのものは、2000年代に地球温暖化への関心が高まる中で、つる性植物による室温の低下やインテリアの緑化を目的として注目され始めたとされています。当初は環境意識の高い一部の家庭や施設での取り組みにとどまっていたものが、大きく広がる転機となったのが2011年の東日本大震災です。震災後の深刻な電力不足を受けて家庭でも節電への関心が一気に高まり、環境省も震災後、グリーンカーテンの普及を呼びかけるなど、節電と温暖化対策の両面から取り組みを後押ししました。
つまり、着想そのものは温暖化対策として生まれ、それが暮らしに根づく契機となったのは震災後の節電意識だった、という二段階の広まり方をしてきたといえそうです。環境省が2014年に公表した調査結果では、グリーンカーテンの認知度はおよそ8割に達していた一方、実際に育てた経験のある人は2割程度にとどまっていたことも報告されています。広く知られてはいても、実践には一歩踏み出しにくい面があるのかもしれません。それでも、公共施設や自治体が主導する形で少しずつ裾野が広がり、今では全国各地の商店街や公民館、老人福祉センター、病院などでも見かけるようになりました。地域の気候や住宅事情に合わせた工夫も各地で見られます。
定番から個性派まで、おすすめの植物

グリーンカーテンで最も多く育てられているのは、やはりゴーヤとアサガオです。ゴーヤは病害虫に強く初心者でも育てやすいうえ、葉が生い茂りやすく、実の収穫という楽しみも兼ね備えています。ほかにも、へちまやきゅうり、パッションフルーツ、ぶどうといった実のなる植物、あるいはクレマチスやルコウソウ、フウセンカズラ、ヤマホロシなど花を楽しむ品種も人気を集めています。
植え付けの時期はおおむね5月中旬から6月上旬が目安とされ、早すぎると寒さで苗が弱り、遅すぎると夏本番までに十分な葉が茂らない恐れがあります。
地域によっては、道の駅や地元の種苗店で販売される在来野菜などの苗を使ったグリーンカーテンづくりを勧める自治体もあり、涼をとるだけでなく、暮らす土地の食文化に触れる小さなきっかけにもなっています。
全国に広がる、地域ならではの取り組み

グリーンカーテンは、家庭だけでなく自治体や学校が積極的に取り入れている点も特徴です。たとえば柏市や佐賀市などでは、ゼロカーボンを掲げる施策の一環として、公民館や市の施設でグリーンカーテンを実践し、住民に取り組み方を紹介する情報発信を続けています。横浜市都筑区のように、限られたスペースしかない集合住宅の住民に向けて、突っ張りポールやフェンスを使ったネットの取り付け方を具体的に案内する自治体もあります。
こうした取り組みは、単に猛暑をしのぐための応急策にとどまらず、そこに暮らす人たちが自分たちの住環境に合わせて工夫を重ね、次の世代や近隣へと伝えていく、いわば地域に根ざした生活文化の一つとして育ちつつあるように見えます。学校での栽培体験が子どもたちの学びの機会になっているという報告もあり、涼をとる工夫が、地域の気候や暮らしに合わせて育まれてきた知恵として、今後も受け継がれていくことが期待されています。
効果と手間、両面から見るメリットとデメリット
さて、実際の効果はどうでしょうか。グリーンカーテンの遮熱効果は、公的機関の資料でも確認されています。環境省の資料によれば、葉が十分に茂ることで日射を大きく遮り、資料によっては約8割の日射熱を遮る効果があるとされ、すだれや遮熱ガラスなど他の遮熱方法と組み合わせながら活用されることもあります。加えて、植物が水分を葉から蒸発させる蒸散作用によって、周囲の温度上昇が緩やかになる効果も指摘されています。電気代をかけずに涼を得られるだけでなく、外からの視線をやわらげる目隠しの役割や、植物を育てる過程そのものに癒やしを感じるという声も、環境省のアンケートで多く挙げられていました。
一方で、水やりや剪定、追肥といった日々の世話が欠かせず、虫が寄ってきやすいこと、夏の終わりには枯れた植物や土の片付けが必要になることなど、手間の面は無視できません。うまく育たなかったという回答も一定数あり、日当たりや水やりの頻度によっては期待どおりの茂り方にならないこともあるようです。誰にとっても手放しで万能というわけではなさそうですが、収穫や開花といった暑さ対策以外の楽しみも含めて向き合うと、多少の手間があっても続けやすくなるのかもしれません。
実際、環境省のアンケートでも、節電の効果そのものよりも、植物を育てる過程で得られる精神的な満足感を挙げる回答が目立っていたことは、グリーンカーテンの魅力を考えるうえで興味深い点だといえるでしょう。
集合住宅で気をつけたいこと

マンションなどのベランダで取り組む場合は、いくつか特有の注意点があります。まず、ベランダは法律上、専有部分ではなく共用部分として扱われる場合もあり、避難経路として確保する必要があるため、避難ハッチや隣戸との仕切り壁をふさがないように設置場所を選ぶ必要があります。
また、プランターの土が排水口に流れ込むと排水が滞り、階下への水漏れや隣戸とのトラブルにつながる可能性もあるため、作業時にはシートを敷くなどの配慮が望まれます。高層階では風が強く吹くことも多く、ネットごと飛ばされてしまう危険があるため、支柱や固定具でしっかりと留めておくことが欠かせません。そもそもガーデニング自体を管理規約で制限している建物もあるため、着手する前に規約を確認するか、管理会社や大家に相談しておくと安心です。
こうした制約を一つずつクリアしながら、限られたベランダ空間に緑を呼び込もうとする工夫もまた、集合住宅ならではの知恵として各地で広がりつつあります。
窓辺の緑は、電気代の節約という実利だけでなく、育てる過程での小さな発見や、ご近所との何気ない会話のきっかけにもなります。一鉢のゴーヤやアサガオから始まる小さな取り組みが、やがてその土地らしい涼のとり方として根づいていく――そんな広がり方をしているのが、グリーンカーテンの面白いところかもしれません。ルールを踏まえたうえで、今年の夏はご自宅の窓辺に、小さな緑のカーテンを迎えてみてはいかがでしょうか。
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もっと知りたいあなたへ
環境省 デコ活(脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動)
https://ondankataisaku.env.go.jp/decokatsu/
環境省 グリーンカーテンプロジェクト
https://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/green/
本記事は筆者の見解・体験に基づくものであり、一部一般的な情報や公開資料を参考にしています。