クラフトリリース
2026.8.20

江の島の夜に、いにしえの光が舞う。「江の島灯籠2026」を歩く夏の旅

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夕暮れの江の島は、昼間とはまったく違う表情を見せてくれるのをご存知でしょうか。

西日に照らされていた海がゆっくりと群青色へ変わり、島内に約1,000基の灯籠がともり始めるころ、歴史ある参道や神社の境内が幻想的な光に包まれる、それが「江の島灯籠」です。

2026年の「江の島灯籠」は、例年より会期を延長し、9月23日まで開催。今年で19回目を迎える夏の風物詩です。江島神社の瑞心門から辺津宮、そして江の島サムエル・コッキング苑へと続く光のインスタレーション「光の絵巻」もさらに進化し、この季節だけの特別な景色を描き出します。歴史や文化、そしてデザインの視点を交えながら、夏の夜の江の島散歩をご紹介します。

夕暮れから始まる、江の島だけの夏時間

江の島観光といえば、青い海や展望台シーキャンドルからの眺望を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、この島がもっとも幻想的な表情を見せるのは、日が傾き始める夕暮れから夜にかけてです。
「江の島灯籠」は、2008年から続く夏の光のイベント。約1,000基の灯籠が島内各所をやさしく照らし、江島神社や御岩屋道通り、江の島サムエル・コッキング苑、江の島シーキャンドルなどを舞台に、島全体がひとつの散策空間になります。2026年は8月1日から9月23日までと、例年より長い期間楽しめるのも魅力です。

江の島灯籠が道を照らしている画像

このイベントの面白さは、「目的地」ではなく「歩く時間」を楽しめること。
橋を渡って島へ入り、土産物店が並び多くの人が行き交う参道を抜け、江島神社へ向かう石段をゆっくりと上っていく。その道のりそのものが、少しずつ光に包まれ、昼間とは違う江の島へと変わっていきます。

もし今年江の島を訪れるなら、夕方の到着がおすすめです。
明るいうちに島内を散策し、海を眺めたり、岩屋を探検したり、江島神社へお参りしたりして過ごしながら、日没を待ちましょう。そして、灯籠がともり始める時間に合わせて歩き始めれば、空の色が刻々と変わる様子とともに、光の演出が少しずつ姿を現していきます。

今年は、17時以降に浴衣や甚平を着て江の島サムエル・コッキング苑へ入場※すると、オリジナル手ぬぐいがプレゼントされる特典も用意されています(数量限定、なくなり次第終了)。夏らしい装いで歩けば、旅の気分もいっそう盛り上がりそうです。 

※17時以降は有料となります。詳細は公式ホームページを参照してください。
https://enoshima-seacandle.com/event/enoshimatourou/

江島縁起を光で描く。「光の絵巻」が伝える物語

江の島灯籠の見どころのひとつが、光のインスタレーション「光の絵巻」です。

舞台となるのは、江島神社の瑞心門から石段、辺津宮、そして江の島サムエル・コッキング苑へと続くエリア。歴史ある境内や参道をキャンバスに、江の島に伝わる物語や自然の風景が、光によって描き出されます。 

その着想のもとになっているのが、「江島縁起(えのしまえんぎ)」。
江の島誕生の伝承として知られる「天女と五頭龍(ごずりゅう)」の物語をはじめ、この島に受け継がれてきた歴史や文化、自然への敬意が、演出全体のテーマになっています。

辺津宮の貝細工の風鈴が下がる葦簀の画像

2026年のテーマは「息づく輝き」。
これまで描かれてきた波や浮世絵、花火など、江の島らしいモチーフに加え、今年は瑞心門周辺に「光の海」やイベントの象徴でもある「灯籠」の演出が新たに加わりました。石段は海の波のように光が流れ、歩く人を境内の奥へと導きます。辺津宮では、光に照らされた貝細工の風鈴がやさしい音色を響かせ、光と音が重なり合う空間が広がります。 

さらに、江の島サムエル・コッキング苑には、高さ約5メートルの新作「天空の灯り」が新たに登場したのも今年の見どころです。
透明な絵馬を思わせる無数の面で構成されたこの巨大灯籠は、風を受けてゆっくりと揺れながら光を反射します。デザインの着想源となったのは、「献灯」と呼ばれる祈りの灯りを捧げる文化。灯籠の起源に思いを重ね、「空を舞う天女にも灯りが届けば」という願いが込められているのだそう。 

「きれいだから写真を撮る」
それだけでも十分に楽しめることですが、その背景にある物語を知ると、ひとつひとつの光が少し違って見えてくるかもしれません。

「きれい」の裏側にある、光をデザインするという仕事

「光の絵巻」を歩いていると、思わず足を止めて見入ってしまう場所がいくつもありました。

石段を照らす光の流れ、境内を彩る幻想的な演出、そして「天空の灯り」が風を受けてゆっくりと揺れる姿。それらは単なるイルミネーションではなく、この場所ならではの物語を感じてもらうためにデザインされた空間。

「光の絵巻」のデザイン・演出を手がけているのは、空間デザインや光のインスタレーションを数多く手がけるVELVETA DESIGNです。同社が大切にしているのは、光で空間を飾ることだけではありません。
その土地に受け継がれてきた歴史や文化、人々の記憶を丁寧に読み解き、「その場所だからこそ生まれる体験」をデザインすることです。

サムエル・コッキング苑で煌めく天空の灯りの画像

江の島で「光の絵巻」が始まったのは2021年。
以来、毎年少しずつ表現を進化させながら、瑞心門から辺津宮、そして江の島サムエル・コッキング苑へと舞台を広げてきました。今年のテーマ「息づく輝き」にも、その積み重ねが感じられます。

チーフデザイナーの加藤陽脩さんは、「江島縁起」から始まった演出が、波や浮世絵、花火といった江の島らしいモチーフを重ねながら、古くから続く自然や文化と現代の魅力を結び付ける「新たな輝き」を描いていると内覧会で語っていました。

例えば、新作「天空の灯り」。
透明な絵馬のような面を幾重にも重ねたこの作品は、見た目の美しさだけでなく、前述のように、その背景にある物語まで含めて一つの作品になっているのです。

近年、「体験型アート」や「イマーシブ(没入型)展示」という言葉を耳にする機会が増えました。しかし、「光の絵巻」が目指しているのは、派手な演出で驚かせることではないように感じました。

歴史ある神社や参道、そして江の島の雰囲気を大切にしながら、歩く人の気持ちに寄り添い、夏の夜を心地よく過ごしてもらうこと。
その中では光は主役ではなく、この場所の魅力をそっと引き立てる存在なのかもしれません。

空間デザインとは、目に見えるものをつくる仕事であると同時に、「その場所でどんな時間を過ごしてほしいか」を考える仕事なのかも、と思いながら夜の江の島を歩きました。

夏の思い出を灯す、江の島の夜へ

光の絵巻、瑞心門に映る天女の画像

色々と書きましたが、江の島灯籠は、特別な知識がなくても楽しめるイベントです。

夕方に島へ渡り、参道で食べ歩きを楽しみ、江島神社へお参りをする。そして日が暮れる頃、灯籠に導かれるようにゆっくりと山を下るように歩いてくる——そんな何気ない時間そのものが、このイベントの魅力といえそうです。

時間に余裕があれば、江の島シーキャンドルに立ち寄って夜景を眺めるのもおすすめです。展望灯台から見下ろす湘南の海岸線と、島内に広がる灯りは、昼間とはまったく違う表情を見せてくれます。

そして歩き終えたころには、きっと気付くでしょう。灯籠は、足元を照らすためだけのものではないということに。

昔から人々が願いを託してきた灯りは、時代を超えて受け継がれ、今では光のインスタレーションという新しい表現をまといながら、訪れる人の心を静かに照らしています。
歴史ある神社、海から吹く夜風、やさしく揺れる灯籠の光。そのひとつひとつが重なり合って生まれる景色は、この季節、この場所でしか出会えないもの。

今年の夏は、夕方からの江の島を歩いてみませんか。
きっと昼間とは違う、新しい江の島に出会えるはずです。

―――
もっと知りたいあなたへ

公式江の島灯籠2026
https://enoshima-seacandle.com/event/enoshimatourou
VELVETA DESIGN
https://www.velveta.jp/

本記事は筆者の見解・体験に基づくものであり、一部一般的な情報や公開資料を参考にしています。

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