日本と異国を感じる東京まんなか散歩 〜神田明神、ニコライ堂、湯島聖堂〜

東京都千代田区といえば、皇居や国会議事堂、首相官邸などが集まる日本の中心地。同じ千代田区でも、少し北の方に向かい文京区と接するあたり、JR御茶ノ水駅周辺は有名大学や病院などが立ち並び、政治の中心地とはまた違った趣のある街が広がっています。
実はこのエリアには「日本」と「異国」の双方を感じ取れるスポットがあります。東京のまんなかで、街の個性と文化と歴史をそれぞれ楽しめるお散歩ルートをご紹介します。
言わずと知れた「商売の神様」〜神田明神
「神田明神」は実は通称で、正式名称は「神田神社」といいます。まさに東京の中心「神田、日本橋、秋葉原、大手町、丸の内、旧神田市場、豊洲魚市場、全108町会」の氏神様としてこの地にあるそう。

年が明けて初仕事の日から数日間は、商売繁盛を願って多くのビジネスマンが訪れます。この光景はテレビでもよく放映されていますね。御神体のひとつ、少彦名命(スクナヒコナノミコト)は、えびす様の名前の方がよく知られているかもしれません。えびす様は商売繁盛の神様であり、また同じく御神体のだいこく様は、国土開発や国土経営、殖産の神様として祀られており、商売をする人たちにとってかけがえのない神様です。
大鳥居の脇にある「天野屋」は、江戸時代からの製法で作り続ける甘酒で有名なお店。伝統手法で作られる甘酒はお酒ではありません。近年、アミノ酸やブドウ糖を効率よく摂取できるため「飲む点滴」とも称され、頭を使う受験生の勉強のお供にも良いと注目されています。
千代田区の「景観まちづくり重要物件」にも選ばれているこの天野屋の佇まいは、訪れる人たちに江戸時代の名残を感じさせ、神田明神門前の風情を一層盛り上げています。
日本の学びのまんなかに〜湯島聖堂
神田明神の大鳥居を背に南の方角、御茶ノ水駅方面に向くと、目の前に緑の森と長く続く塀が広がります。ここは、徳川五代将軍の綱吉が学問(儒学)の振興のために創建した「湯島聖堂」です。1960年に創建され、その後1797年に幕府の直轄学校「昌平坂学問所」となりました。

公園のようになっている園内へ進むと、立派な大成殿が目に入ります。これは儒学の祖である孔子の廟で、元々上野にあった孔子廟を綱吉がここへ移転したものだそう。関東大震災で消失してしまったため、現在の大成殿は1935年に鉄筋コンクリートで再建したものです。
「昌平坂学問所」の伝統を継ぐ学びの場所として、中国古典文学の講座も開かれているそう。学生時代に触れた論語や白楽天の詩が思い出されます、と言いたいところですが「子曰く」の先が出てきませんでした。
敷地内にはほかにも、台北のライオンズクラブから寄贈された世界最大の孔子像や楷樹(孔子の墓所に植えたと伝わる木)の大木、構造がそれぞれ違う門などがあり、散策にピッタリの静かな場所となっています。
突然の異国感〜ニコライ堂
緑に囲まれた静謐な場所を堪能し、論語を思い出そうと躍起になったところで湯島聖堂を後にし、御茶ノ水駅方向へ。神田川にかかる聖橋を渡り神田小川町方面へ本郷通りを下っていきます。
聖橋口周辺には大きなビルが立ち並び、先ほどまでの静寂は嘘のように、たくさんの若者やビジネスマンが忙しげに歩く合間を縫って進むと、目の前に突然現れる異国調の建物! これが、日本ハリストス正教会教団 東京復活大聖堂、通称「ニコライ堂」です。

ロシアから正教を伝導するために日本に渡った亜使徒(使徒に等しい働きをした者を意味する聖人の称号)である聖ニコライが、最初の地・函館から上京し「正教本会」を設立したのがこの土地。ゆえにニコライ堂と呼ばれています。
1891年に復活大聖堂として竣工しましたが、関東大震災でドームは崩落し火災で焼け落ち、残ったのは土台とレンガ壁だけになってしまいました。現在の聖堂は、1929年に再建され、1962年に国の重要文化財に指定された日本最大のビザンチン式建造物、なのだそう。
信徒でなくとも内部の拝観をすることができ、こちらもコロナ禍には拝観を停止していましたが、現在では個人の訪問であれば予約なしで入れていただけます。内部は黄金に輝くイコン(聖人の板絵)が飾られています。中には16世紀にロシアから持ち込まれたものもあるそうで、外観の重厚さに加え、内部のきらびやかさは、今よりも西洋的なものがはるかに珍しかった当時の人たちにはびっくりするものだっただろうと想像されます。
束の間に触れられる異文化と日本文化
JR御茶ノ水駅を中心に、半径300m以内に3つの違う文化にゆかりある建物が存在するこのエリア。神田川の両側に大学や大学病院、ビジネスビルが立ち並ぶ中、少し足を伸ばせば緑の豊かさや静謐な時間、そして歴史や異文化の香りを楽しめるこのルートの散歩で、日本と他国の文化と歴史に束の間触れてみてはいかがでしょうか。
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もっと知りたいあなたへ
神田明神
https://www.kandamyoujin.or.jp/
湯島聖堂
http://www.seido.or.jp/
ニコライ堂(東京復活大聖堂)
https://nikolaido.org/