納豆の魅力を再発見!粒の違い・郷土の工夫・腸活にもオススメの栄養力

「納豆はお好きですか?」こう問いかけると「毎日必ず食べるほど好き!」という人もいれば、顔をしかめてしまう人もいるでしょう。独特の匂いと粘りと味で、人の好みを真っ二つに分けてしまう不思議な食品の納豆。近年健康効果が再注目されているのをご存じでしょうか。今回はそんな納豆の世界を深堀りします。
粒の大きさで名前が変わります
水に浸した大豆を茹で、納豆菌を振りかけて発酵させることで作られる納豆。
大豆に含まれる栄養素に加え、発酵する段階でさまざまな成分が生成されるため、栄養価の高い食品として古くから親しまれています。
納豆は粒の大きさで、大粒(直径7.9ミリ以上)、中粒(直径7.3ミリ以上~7.9ミリ未満)、小粒(直径5.5ミリ以上7.3ミリ未満)、極小粒(直径4.9ミリ以上5.5ミリ未満)、超極小粒(直径4.9ミリ未満)の5種類に分類されます。
一般的に流通しているのは小粒と極小粒が多く、これらのサイズは、粘りが強いのでご飯と一緒に食べるのに適しています。対して大粒は食べ応えがあり、豆の味をしっかりと感じられるのが特徴。そのため、納豆汁など料理の素材として使うのに向いているといわれます。
納豆のルーツを探る 発酵文化とその始まり
では、私たちが毎日食べているこの納豆、そもそもどんな歴史をたどってきたのでしょうか?
納豆の起源や発祥には諸説ありますが、一番古いものは、縄文時代末期から弥生時代、当時の竪穴式住居の床に敷かれた藁の上に煮大豆が落ち、それが発酵して偶然納豆が出来たのではないかという説です。いずれにしてもかなり昔から私たちの生活に身近に存在したといえるようです。
そんな納豆を作るのに欠かせない納豆菌は、枯草菌の一種で空気中や藁などにすみついており、暖かくて湿ったところを好みます。当時の竪穴式住居は中に炉があって適度に暖かかったので、この納豆菌が繁殖しやすく、自然と納豆作りに最適な環境ができあがっていたと考えても不思議ではありません。
納豆消費量全国一位といえば

日本人の食卓において長く親しまれてきた納豆ですが、地域によって食べ方や人気にも大きな違いがあります。
納豆の消費量全国1位の県をご存じですか?大半の人は水戸納豆で有名な茨城県!と答えるのではないでしょうか。しかし茨城県は第4位。1位は福島県で、以降2位岩手県、3位秋田県と続きます。(※2025年2月発表の総務省家計調査による)
4位の茨城県以下も、5位青森県、6位群馬県、7位山形県、8位長野県、9位富山県、10位宮城県となんとTOP10に東北6県が勢揃いしています。なぜ東北地方の方々は「納豆好き」なのでしょう?
その理由の一つは、冬場のタンパク源として保存の効く納豆が昔から重宝され根付いているということ。雪の多い東北地方では、冬の間の食料調達に苦労してきた背景があると考えらえます。もう一つの理由は米の産地が多いため、朝食にご飯を食べる傾向が強いということ。ご飯のおともに納豆、という方が多いのでしょう。朝食がパン食のエリアは納豆消費量が少ない傾向にあるそうです。
「関西人は納豆を食べない」は都市伝説?
ではワーストTOP10はどうでしょう。よく「関西人は納豆を食べない」などと聞きますが果たして…!?
ワースト1位はダントツで和歌山県、2位香川県、3位大阪府…以降もワースト上位には関西、中国、四国の県が続きます。西日本の人が納豆を食べないというのは、どうやら間違いではないようです。
気候が温暖で、瀬戸内海などからタンパク源である魚がいつでも手に入る西日本では、もともと納豆を作る習慣がなく、それが現在でも「納豆を食べない」要因になっていると考えられます。また、「匂いが苦手」という人も多い印象を受けます。
とはいうものの、近年は健康食として納豆が取り上げられる機会が増えたこともあってか、以前よりも食べる人が増えてきました。関東ではスタンダードな商品が人気ですが、関西では匂いをカバーできるフレーバー系のタレがついたものが人気なんだとか。大手スーパーでも、関東と関西では取り扱う商品の種類や数が異なるようで、地域色が出るのが面白いところです。
地域で味わう!全国のご当地納豆
粘りが出るまでよくかき混ぜて、付属のタレをかけてご飯にどーん!これが納豆の最もスタンダードな食べ方でしょうが、各地方には魅力的な納豆料理がたくさんあります。今回はそんなご当地納豆についてもご紹介します。
そぼろ納豆(茨城県)

刻んだ切り干し大根を納豆と和え、醤油やみりんで味付けした茨城県水戸市発祥の郷土料理。ご飯のおともにはもちろん、酒の肴にも最適で土産としても人気が高い。
納豆汁(山形県/秋田県)

山菜やキノコなど、お好みの具を入れた味噌汁にすり鉢で一粒一粒丁寧にすりつぶした納豆を加えて作る冬の家庭料理。地域によって七草の時期に食べたりお正月に食べたりする。
きりざい(新潟県)

きりざいの「きり」は切ること、「ざい」は野菜のこと。漬物や野菜を細かく切って納豆と混ぜ合わせて作るもので、入れる食材は各家庭で様々だが、野沢菜漬けは必須といわれる。
こうした郷土料理も東日本のものが多いですが、近年では西日本でも独自の納豆料理が増えてきました。鳥取県の学校給食メニュー「スタミナ納豆」は、地元の学校給食として人気でしたが、テレビで紹介された影響もあり、全国的に有名になりました。納豆に鶏ひき肉やネギなどを加えて炒め、ピリ辛に味付けしたもので、栄養価の高い納豆を子どもたちにおいしく食べてほしいという思いから生まれたメニューなのだとか。
給食で人気が出れば、小さな時から口にする機会も増えファンも増えていきそうです。今後は西日本でもさらに納豆の人気度が上がっていくに違いありません。
腸活にも◎ 納豆の健康効果
各地で工夫を重ねながら食べ続けられてきた納豆ですが、その魅力はおいしさだけにとどまりません。
「納豆は身体にいい」とよく聞きますが、何がそんなに身体にいいのかを理解している人はどのくらいいるでしょうか。納豆がスーパーフードといわれる所以を紐解いてみましょう。
納豆は炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルという五大栄養素をバランスよく含んでいます。さらに第六の栄養素ともいわれる食物繊維が豊富なので、腸内環境を整え、便秘解消や生活習慣病予防に役立つといわれています。納豆1パックの食物繊維量はニンジン約1本分に相当するといいますから驚きですね。
さらに大豆由来のイソフラボンは、女性ホルモンに似た働きで、骨粗しょう症予防や更年期障害の緩和に役立つとされていますし、納豆特有の酵素であるナットウキナーゼは、血栓を分解し血液をサラサラにする効果があるといわれます。
納豆の栄養効果を最大限に享受するためには、熱に弱いナットウキナーゼの特性を鑑みて加熱せずにそのままで、そしてビタミンCが豊富なネギやキムチ、オクラなどと一緒に摂取して鉄分の吸収率を高めるのがおすすめです。
納豆をもっと楽しもう
納豆は身近な存在ながら、まだまだ私たちが知らない魅力もたくさんありそうです。粒の大きさひとつから、地域ごとの味付け、身体を整える力まで。知れば知るほど奥深い納豆の世界を、今日の食卓で少し意識してみませんか?好みは人それぞれ。でもその違いこそが、日本の食文化の豊かさなのだと気付かされます。
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もっと知りたいあなたへ
全国納豆共同組合連合会
https://www.natto.or.jp/
総務省統計局 「家計調査」
https://www.stat.go.jp/data/kakei/index.html