猛暑を乗り切るための知恵〜都会生活者が実践できる効果的な暑さ対策〜

記録的な猛暑が日本全国に広がり、過ごしやすい北の国だったはずの北海道でも近年では35度を超える猛暑日があるなど、酷暑列島となっている日本。首都東京でも、2025年8月20日時点で猛暑日がすでに16日を数えています。うだるような暑さは、体力のみならず精神面にも影響を及ぼし、熱中症をはじめとする健康リスクが高まります。都市に暮らす私たちが、日々の生活で無理なく実践できる効果的な猛暑対策をまとめ、暮らしを守る知恵としてお届けします。
暑さを避ける行動習慣を身につける
外出は時間帯を選ぶ
早朝や夕方の涼しい時間帯に外出を集中させ、日中のピーク(11時〜16時)の活動を減らすことが基本です。どうしても外出が必要な場合は、日陰を選んで歩く、屋根付きのルートや地下通路を利用するなど、日差しを避ける工夫をしましょう。
服装の工夫
通気性・吸汗性に優れた衣類を着用しましょう。クールビズという言葉も少し古い印象ですが、必要のない時にはビシッと着込まなくても良いのではないでしょうか。命を危険にさらすより、命を守る服装を選びましょう。薄手でゆったりしたコットンやリネン素材の服は、体温の上昇を防ぎます。帽子や日傘も強い日差しから頭部を守る重要なアイテムです。最近ではUVカット機能の衣類やグッズも増えているので活用しましょう。
冷却グッズの利用

冷感タオル、ネッククーラー、冷却スプレーなど、手軽に使えるグッズが多く販売されています。スリムなシリコン性の氷のうを魔法瓶でできたケースに収められるものは、つけっぱなしのネッククーラーと違い、必要な時にのみ使用できます。首筋や脇の下など大きな血管が通る場所を冷やすことで、全身の体温を効率よく下げることが可能です。ハンディファンは、現在では多くの人が外出時に利用していますが、女性は髪の毛の巻き込みに気をつけましょう。
室内で快適に過ごすための工夫

エアコンの適切な利用
エアコンは無理せず使うことが大切です。室温28℃前後を目安に、冷やしすぎないよう設定しましょう。扇風機やサーキュレーターを併用することで、冷気を部屋全体に循環させ、効率的に涼を得ることができるので、導入を検討してみてください。
遮熱・断熱の工夫
カーテンやブラインドで直射日光を遮り、窓に遮熱フィルムを貼ることで室温の上昇を防ぎます。最近は簡単に取り付けられる断熱カーテンやシートなどもあり、冷房効率の向上と省エネにも役立ちます。ベランダに面した大きな窓などは、ベランダ側に葦簀(よしづ)や簾(すだれ)を掛けて直射日光を遮るのも良い方法です。
また、ゴーヤやヘチマといったツル性の植物を窓際で育てる「グリーンカーテン」も最近では定着してきました。日陰をつくるだけでなく収穫も楽しめることから、一粒で二度おいしいといった体験もできるのでこちらもおすすめです。
水分補給と塩分摂取

こまめな水分摂取は熱中症予防の基本です。一度に大量の水を飲むより、少量をこまめに摂るよう心掛けましょう。「のどが渇いたな」と感じるよりも前に飲むことが肝要です。発汗による塩分やミネラルの喪失に備え、スポーツドリンクや塩飴などで補給することも忘れずに。高齢者や子どもは気づくのが遅れがちなので、特に注意が必要です。スイカは程よい甘さも心地よく、水分やミネラルも補給できるのでおやつにも活用しましょう。
また体温を下げる飲み物として「アイススラリー」にも注目が集まっています。アイススラリーは、通常の氷よりも結晶が小さく流動性が高いことから体の内部を効率よく短時間で冷却できるといわれています。製薬会社などからアイススラリー飲料が販売されていますので、通販サイトなどをチェックしてみてはいかがでしょうか。
また、アイススラリーを作ることのできる冷凍庫も発売されましたが、2025年8月現在は法人向けのレンタルのみとなっているため、一般向けの販売が待たれるところです。
食生活で体調管理

体を冷やす食材の活用と消化の良い食事
キュウリ、トマト、ナスなど、水分の多い夏野菜は体を冷やし、食欲が落ちやすい猛暑時におすすめの食材です。高温多湿の中で、消化に時間のかかる重い食事は体力を消耗します。そうめんや冷やしうどん、蕎麦、サラダなど、消化が良く栄養バランスの取れたメニューを心がけましょう。KURAレシピでご紹介している「熊本県産トマトと新潟県産蕎麦のサラダ~爽やかな風味で彩る一皿~」は夏にピッタリの一皿ですので試してみてください。
KURAレシピ:熊本県産トマトと新潟県産蕎麦のサラダ~爽やかな風味で彩る一皿~
冷たい飲み物の飲み過ぎに注意
猛暑の外出から帰ってきた時など、冷え冷えの飲み物をぐいっと飲みたくなりますね。しかし、冷たい飲み物の摂りすぎは胃腸の働きを弱めることがあるので、適度な摂取を心がけ、常温の水や麦茶なども取り入れて健康的に過ごすようにしましょう。
心身の健康維持
睡眠環境を整える
寝苦しい夜が続くと疲労も蓄積しやすくなります。冷却まくらや通気性の良い寝具、寝室の換気など、睡眠の質を高める工夫を。入浴は就寝よりも3時間以上前に済ませ、深部体温を下げるようにしましょう。近年では、エアコンはタイマーで消すよりも、28度程度の温度でおやすみモードなどに設定し、冷えすぎを防ぎながらも、朝まで運転させておく方が快適に眠れるとの報告もされています。
適度な運動・ストレッチ
この暑さでは外での運動は命の危険が伴うこともあるため、暑さで体を動かす機会が減りがちですが、室内での軽いストレッチやウォーキングは血流を促進し、体力維持につながります。無理なく続けられることが大切です。
最新情報の活用で命を守る意識を

気象庁や自治体のホームページ、スマートフォンのアプリなどで、気温や熱中症警戒情報をこまめに確認しましょう。外出時やフェスなどのイベント参加時には、普段以上に最新の情報に目を配ることが大切です。
また、特に高齢者や子どもは暑さに弱いことと、体調の悪化を自分で伝えることが難しい場合があるため、周囲が体調の変化に気を配ることが重要になります。外出時などは必要に応じて自治体の提供する「クーリングシェルター(指定暑熱避難施設)」なども活用しましょう。
猛暑が続く日本、特に都市の平野部で日常生活を安全かつ快適に過ごすためには、知恵と工夫、そして無理をしすぎない心掛けが不可欠です。自分自身と家族、そして周囲の人を守るために、今回紹介した対策をぜひ実践してください。都市生活の中でも、暑さに負けず健やかに過ごせるよう、一人ひとりが意識を高めていきましょう。
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もっと知りたいあなたへ
環境省 熱中症予防情報サイト
https://www.wbgt.env.go.jp/alert.php
厚生労働省 熱中症予防のための情報・資料サイト
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/nettyuu_taisaku/
日本気象協会 熱中症ゼロへ
https://www.netsuzero.jp/learning/le01