ニャンコ好きにはたまらない!散歩シリーズ〜東京都世田谷区・豪徳寺〜

世の中は、ネコ派とイヌ派にキッパリと分かれるものと理解していますが、独断と偏見と自分の趣味により、『ニャンコ好きにはたまらない!散歩』シリーズとして、猫にゆかりのある場所を訪ねる旅のレポートを折々に記していきますので、お付き合いください。
招き猫発祥の地、東京都世田谷区・豪徳寺
豪徳寺といえば、首都圏近郊にお住まいの方や、地理に詳しい方は小田急電鉄小田原線に豪徳寺駅があることをご存知でしょう。訪れたことがなければ、この豪徳寺駅が最寄り駅かと思うのではないでしょうか。しかし実は違うのです。
招き猫発祥の地といわれる大谿山 豪徳寺(だいけいざん ごうとくじ)は、東京都世田谷区豪徳寺2丁目にあるのですが、その最寄り駅は東急電鉄世田谷線の宮の坂駅なのです。
とはいうものの、この宮の坂駅は1945年7月に豪徳寺前駅が廃止→移設されて宮の坂となったという歴史があるため、宮の坂駅(徒歩5分)が最も近い鉄道駅となっています。もちろん小田急線の豪徳寺駅からも徒歩15分なので十分最寄り駅といえますね。
さて、東急田園都市線の三軒茶屋駅から京王電鉄の下高井戸駅までを走る世田谷線。今回は三軒茶屋から乗車してみました。向かう先は当然、宮の坂駅です。世田谷線は東京を走る2つの路面電車のうちのひとつですが、専用軌道を走っているため、路面電車といっても車と並走するようなことはないのが少し残念。6つ目の駅が宮の坂です。さらに3つ乗れば終点の下高井戸駅に到着するので、営業距離は5kmと短めです。

宮の坂駅からは、住宅街を5分ほど歩けばすぐに豪徳寺の山門まで到着します。
さっそく中に入ってみましょう。境内は、これが都内かと思うほどに緑が多く、まるで森の中のように静寂に包まれており大変癒されます。
豪徳寺は、彦根藩主であった井伊家の江戸における菩提寺であったため、井伊家ゆかりの文化財が多く所蔵されているなど、江戸の昔をしのぶこともできる場所ともなっています。
井伊家の墓所や1677年(延宝5年)建立の仏殿、1679年(延宝7年)に鋳造された区内では最古で美術的価値も高い梵鐘のほか、近年建立された三重塔や地蔵堂など多くの見どころがある境内ですが、一番人気は当然ながら「招き猫」。この招き猫をお祀りするのが招福殿で、周囲にたくさんの招き猫が奉納されている風景は圧巻のひとことです。

また、境内には猫にまつわるものが多く、三重塔には十二支のほかに猫が飾られていたり、絵馬も招き猫の絵柄であったり、何よりも本物のネコたちがうららかな日差しの中でうとうとしていたりするのが見られました。これはネコ好きにはたまらない!
なぜ豪徳寺が招き猫のお寺になったのか?
では、なぜ豪徳寺は招き猫のお寺になったのでしょうか?
江戸時代、まだ普通の?お寺だった頃、鷹狩りの帰りに殿様が門前を通ったところ、そこにいた猫に手招きされてお寺に立ち寄られました。寺で和尚との話を楽しんでいると、突然雷雨が一帯を襲いました。殿様は「猫が招いて助けてくれたのだ」と、その幸運に感動し、このお寺を支援することにしました。この殿様こそが、彦根藩主の井伊直孝だったのでした。
直孝の支援によって再興をなした豪徳寺は、その後、福を招いた猫を「招福猫児」と呼び、お祀りをする招福殿を建立しました。堂内には招福観音菩薩立像が安置され、1年中たくさんの参詣者が訪れ、家内安全、商売繁盛、開運招福を願っています。私も小さな「招福猫児」を寺務所で買い求めましたが、これは願いが成就したら感謝を込めてこの場所に奉納するのが慣わしだそう。どうか願いが叶いますように!
小判を持たない招き猫の教え

ところで、お気づきでしょうか?
豪徳寺の招き猫は小判を持っていないのです。ただ右手をあげているだけ。
これは、報恩感謝の気持ちがあれば自然とその人のもとに福が訪れるという教えからなのです。
招福猫児は、人を招いて「縁」をもたらしてくれますが、福そのものを与えてくれるわけではありません。人との大切な「縁」をいかせるかどうかは、その人次第――ということが豪徳寺の豆知識としてウェブサイトに公開されていましたので、しかと心に刻みました。
ネコ派の人は外国人にも多いのでしょうか、訪れた日には海外からの訪問客も多く、聞こえる言葉がほぼ外国語という不思議な空間を味わいました。聞くところによれば、イギリス公共放送BBCに取材されるなど、海外メディアに多く取り上げられたことや、それを見て訪れた人がさらにSNSで拡散するなどして広く世界のネコ好きたちに広まった模様でした。ネコ好きパワー恐るべし。
寺務所に置かれた見本のお札の、宛名というのか授与名のところに「タマ殿」と書かれているのを見て、「やはりネコのトラディショナルネームはタマなのか」と深く頷きながら、招き猫に囲まれたホンワカなひとときを過ごした豪徳寺を後にしました。新緑の季節が大変オススメですので、ぜひ訪ねてみてください。
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