クラフトリリース
2026.5.21

関係性の積み重ねが、組織の構造を更新し続ける企業のかたち― 出会いから広がった事業領域 ―

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大阪のIT企業、株式会社リテラルでは、多様な人が働いている。みな、それぞれの力を発揮し、辞めずに働き続けている。なぜ、そのような多様な人材の集まる組織の運営が可能なのか。人との出会いをきっかけに事業が広がり、その都度、働き方や役割、関係性を調整してきた。その積み重ねが、結果として、多様な人が力を発揮できる組織をつくっているのだという。

代表取締役 船越隆之(ふなこしたかゆき)氏に聞いたリテラルの実践を通して、障害者雇用という枠組みにとどまらない、多様な人がともに働く組織のつくられ方を考える。

株式会社リテラルとは

株式会社リテラル パンフレット

―会社と事業内容について教えてください。

創業当初はシステム開発を中心とした会社でしたが、現在は大阪を拠点に、IT事業に加え、就労移行支援、農業、飲食などにも取り組んでいます。当初から多角化戦略があったわけではなく、出会いの広がりの中で結果として事業が展開していったというのが実情で、就労移行支援事業所もその延長線上にあります。

現在の従業員数は約33名で、そのうちIT部門が約16名です。障害のある社員は9名在籍しており、法定雇用率の対象となる規模ではありませんが、結果として多様な人材が働く組織になっています。この雇用構成も制度上の義務から始まったものではなく、実習の受け入れを通じて現場が一緒に働けると判断し、実際に能力を発揮できることを確認してきた積み重ねです。

理念は「ITを通じて人を育み、多様性を認め合いながら、仕事で輝ける社会をつくる」です。これは創業当初から掲げていたものではなく、実践を振り返り、どのような判断を重ねてきたかを整理する中で言語化されました。違いを否定せず、その人の個性や価値を尊重する。その積み重ねによって、社員が社会や仕事の中で認められ、役に立っていると感じられる組織でありたいと考えています。

組織はどう変わり続けるのか

―組織の中でダイバーシティはどのように位置づけられているのでしょうか。

ダイバーシティを制度や標語として掲げている感覚はありません。異なる特性や価値観を持つ人とともに働く現実があり、その都度起こる出来事に向き合ってきた結果が、現在の組織の姿です。変化の速い時代には、同じやり方を続けるだけでは通用しません。だからこそ、画一的な仕組みや人材像に頼らず、組織も更新を重ねる必要があると考えています。

ニューロダイバージェントについても、この特性だからこう活躍するという単純な図式ではありません。そうした人が加わることで組織に動きが生まれ、その変化をどう受け止め、整えていくかが重要です。変化は本人か環境かのどちらか一方に原因を求めるものではなく、本人と周囲との関係性の中で生まれてくるものです。価値観の違い、人と人の間で生じる緊張やずれ、新しい人が入れば摩擦やずれは生じます。それを排除するのではなく、原因を考え、調整を重ねる。その過程で少しずつ組織の形が整っていく。その過程を意味あるものとして受け止められるかどうかに、企業の姿勢が表れるのではないでしょうか。

人は一人ひとり異なり、それぞれの強みが発揮されたときにパフォーマンスは高まります。ただし最初から最適解が見えているわけではありません。現場での調整を重ねながら形づくられていく、そのような関係性の積み重ねの中に、ダイバーシティがあると考えています。

多様な人と働く組織のつくり方

株式会社リテラル イメージ画像

―多様な人材がいる現場ではどのような工夫がなされているのでしょうか。

採用については、開発部では求人媒体に募集を出していません。就労移行支援事業所や紹介を通じて出会った方に、そのタイミングで入社してもらう形をとっています。企業規模を踏まえると、一般的な求人媒体を通じて技術者を採用するのは容易ではないためです。

採用時に最も確認するのは、経営理念を理解してもらえるかどうかです。いろいろな人が働いている会社であること、障害のある方や高齢の方もいる中で、共に仕事をしていくことをどう受け止められるかを大切にしています。また、書類や面接だけで判断するのではなく、1カ月程度の実習期間を設け、双方がマッチングを確認します。特に現場のメンバーが、この人と一緒にチームを組めるかという感覚を重視しています。 業務遂行に一定の技術は必要ですが、スキルが未成熟でも適性があれば問題ありません。逆に、技術が高くても当社の文化に合わない場合は採用を見送ることもあります。

入社後は、特別な配慮というより仕事の設計によって調整しています。たとえば曖昧な指示で混乱が起きる場合には、別のスタッフが間に入り、内容を具体化してタスクを分解してから渡します。顧客対応やスケジュール管理に強いストレスを感じやすい人には、無理にその役割を求めず、集中してコードを書くポジションに専念してもらうこともあります。発達障害のあるメンバーの高い技術力を踏まえ、リーダー自身が調整やコミュニケーションを担う側に回った結果、チーム全体のパフォーマンスが向上した例もあります。

戦力として成熟していない人もいますが、長期的な視点で育成しています。生産性や利益のみを追求すれば、取り残される人も出るでしょう。しかし、規模拡大や利益最大化を最優先にしているわけではなく、ゆっくりでも着実に成長していけばよいと考えています。もし職場で手が止まっている人がいるなら、それは本人だけの問題ではなく、状況に気づいて声をかけられない周囲のメンターやマネージャー、さらに目が行き届いていない経営層の責任でもあります。適切な指導や働きかけができないなら、それは組織側の課題であり、周囲がその人の特性や状態を把握して関わることもプロの仕事だと考えています。

組織の構造については、いわゆる上司という位置づけは置いていません。システム開発部にはマネージャーや各チームのリーダーはいますが、それ以外はみんな一緒という感覚に近いです。メンターも特別な役職ではなく、上下関係を強く作らない組織を目指しています。代表であっても新入社員であっても、基本的には対等に接する文化を大切にしています。

―働く環境とコミュニケーションについて何か工夫はありますか。

社内のコミュニケーションは口頭だけではありません。業務のメインはSlackなどのチャットツールです。発話が困難な社員や、口頭でのコミュニケーションに苦手意識がある社員もいるため、テキストベースのやり取りは標準的な業務手段となっています。会議は口頭で行われますが、筆談を交えたコミュニケーションも日常の中で自然に受け入れられています。

環境面では、在宅ワークの活用や、集中力を高めるためにイヤホンで音楽を聴きながら作業することも認められています。個々のパフォーマンスを最大化するための自由が尊重されているのです。

当社にはIT、福祉、農業など多岐にわたる事業部があり、働く場所も物理的に離れています。そこで活用しているのがRECOGという社内SNSです。スレッド機能で全体の情報共有を行うほか、レター機能では個人やグループに感謝や称賛のメッセージを送ることができます。日常の小さなことから業務上の貢献までが可視化される仕組みです。

働くことの優先順位 ― 辞めない組織をつくる ―

株式会社リテラル 代表取締役 船越隆之

―システム開発部では離職者が1人もいないと伺いました。なぜこれほどまでに「辞めない」環境が作られるのでしょうか。

働くことの優先順位は人によって異なります。報酬を重視する人もいれば、心身の負担が過度にならない安心感や、無理なく業務を続けられる安全な環境、働きやすさや成長機会を重視する人もいます。若い世代の中には、給与がそこまで高くなくても休みを確保したい、残業は避けたいという声もあり、働くことに求めるものは多様です。

正直に言えば、当社の給与水準は高いとは言えません。報酬をさらに引き上げるのであれば、従来と同じやり方では難しいでしょう。会社を存続させるために利益は不可欠です。しかし、生産性や利益のみを基準にすれば、取り残される人が出てきます。数字を最優先に据えるのではなく、無理のない形で持続的に向上させる仕組みを構想することが経営者の役割だと考えています。

個々の価値観に対しては、フレックスやリモートといった制度を整え、職務内容や業務量がその人に適合するよう設計しています。価値観の一定の整合と役割の再設計、その蓄積が現在の安定を支えていると考えています。

ある集まりで私が経営の考えを伝えた後、社内SNSに社員から次の投稿がありました。「仕事は給料のためだけではなく、仕事という形を通して人生の質のようなものをお互いに共有し合う経験だとも思います」 その投稿を読んだとき、働くことの意味が組織内で共有されていると実感しました。

―これからについて教えてください

当社では「10の事業をつくる」と宣言しています。すでにIT、福祉、教育、人材、農業、飲食の6つは動いています。残るのはエンタメ、ヘルスケア、観光、地方創生です。10の事業を創出し、それらをシナジーさせることがビジョンとして掲げた約束です。「アップル梅田」はITと福祉、「メープル関西」は農業と福祉とIT、「スナックB」は飲食と福祉の掛け合わせです。異なる分野が重なったときに新たな機会が生まれるという手応えを感じています。

スタッフの中には、30歳を過ぎるまで就労経験のなかった方もいます。自分に自信がなかった、機会に恵まれなかったという理由で長く無業の状態が続いていましたが、いまは現場で中心的な存在として働いています。能力があっても挑戦の場に接しなければ力は発揮されません。障害や環境が理由でその扉が閉ざされているのだとしたら、企業が接点をつくることには大きな意義があります。接点が経験となり、自信となり、役割へと結びつく。そしてその過程が組織全体の質を高めていくのです。

10の事業を創出し、相互に連動させるという構想は、単なる事業拡張ではありません。分野を横断することで新たな挑戦の機会と選択肢が生まれ、人が本来持っている力を発揮できるようになる。その結果が組織の成熟につながる。この循環を企業として意識的に設計していきたいと考えています。

編集後記

本インタビューを通して見えてきたのは、制度や標語を先に置くのではなく、日々の応答と調整の積み重ねによって組織をかたちづくっていく企業の姿である。印象的だったのは、違いを個人の特性として固定的に捉えるのではなく、人と人との関係のなかで生じるものとして受け止めていた点だ。摩擦やずれを避けるのではなく、その都度向き合い、役割や関係を組み替えていく。

その責任を個人ではなく組織側に置いていることに、この企業の特徴がある。働くことの価値や優先順位が多様であることを前提に、役割や機会を設計し直していく姿勢は、離職の少なさにもつながっているのだろう。完璧な制度があるからではなく、変化に応答し続ける柔軟さがあるからこそ、この組織は更新され続けている。その可塑性こそが、この企業の強みなのだと感じた。

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もっと知りたいあなたへ

株式会社リテラル|大阪梅田のシステム開発会社・就労移行支援/福祉事業
https://www.literal.jp/
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