2025.10.9

食べてわかった40年愛される理由~萬坊いかしゅうまいのやさしい味わい~

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佐賀県の北西部に位置し、玄界灘に面した唐津市はイカの名産地として全国的に有名です。本サイトで「KURAレシピ」を担当するフードスタイリスト「マロン」の出身地でもあり、何かとご縁の深い唐津市。
今回はそんな唐津市の名産品「萬坊(まんぼう)いかしゅうまい」を実食し、味わいとともに地域の魅力をお届けします。

活気と情緒が息づく港町〜呼子町〜

今や唐津市のみならず、佐賀県の名産品としても定着しているいかしゅうまいですが、その発祥は唐津市呼子町(よぶこちょう)というところ。唐津市の中でもイカの産地として特に有名な港町で、一年を通してケンサキイカ、アオリイカ、甲イカなどさまざまな種類のイカを楽しむことができます。

身が透明なイカの活作りの画像

生きたイカを捌いてすぐに盛り付ける「活造り」は呼子町が発祥といわれていて、透き通った身はクリスタルガラスのように美しく、コリコリとした食感がやみつきになる美味しさです。活造りを味わった後は、ゲソを天ぷらにして二度楽しむのが呼子流。サクサクの衣をまとった新たなイカの表情に、嬉しい驚きが待っています。

呼子町は日本の朝市ランキングの上位に常にランクする「呼子の朝市」も有名で、港町の活気を存分に楽しむことができます。獲れたての海産物はもちろん、加工品や野菜が所せましと並び、平日でもいたるところで行列ができている姿は圧巻です。元旦以外は毎日朝7時30分から12時まで開催されていて、食べ歩きを楽しむ大勢の人で賑わいます。                                     

また、呼子町は映画「国宝」の原作で話題の、芥川賞作家・吉田修一氏の著作を同じく原作とした映画「悪人」の撮影地としても注目を集めました。

港や小道は映画の世界そのままの静かな情景を今も残しており、潮風を感じながら歩くだけで、スクリーン越しに見た風景と現実が重なるような情緒を感じることができるのもポイントです。
歴史ある朝市の賑わい、映画の舞台を歩く感動、そして絶品の海の幸。呼子町は、人々の活気と自然の静寂や恵みが共存する豊かなまちなのです。

呼子町生まれの名産いかしゅうまい

そんな呼子町で生まれたいかしゅうまい。イカやスケトウダラのすり身に玉ねぎなどを加えてタネを作り、そのタネを細かく刻んだワンタンの皮をまぶすように包むのが特徴です。見た目にも華やかで、老若男女に愛されています。呼子町を中心に、佐賀県内では数十社がいかしゅうまいを製造・販売していますが、元祖は呼子町に本社を構える「萬坊」です。今回はその本家の味を、蒸籠で蒸してしかと味わっていきます!

蒸籠で味わう、やさしさ溢れる一口

それでは実際にいただきましょう。

冷凍庫から取り出したいかしゅうまいを蒸籠に並べ、火にかけて12分。ほのかにイカの香りを感じる中、蒸籠の蓋をそっと開けてみると――白い湯気とともにイカの甘くふくよかな風味も立ち上がり、深呼吸したくなるほど。しゅうまいを纏っているワンタンの皮がひらりと開き、まるで白い菊の花のような装いです。その上品で華やかな見た目に、食べる前から心が躍ります。

半分にカットしたいかしゅうまいを白いお皿に乗せた画像

さて、まずはそのまま何もつけずに一口。

やさしい――まず脳裏に浮かんだのは、この言葉でした。まるで空気のようにふんわりとした食感。上品でまったく臭みのないイカの香りと丁寧に練りこまれた玉ねぎのやさしい甘さ。たまに出会うイカの切り身の食感がプリプリとして良いアクセントになっています。それぞれの食材が喧嘩せず、お互いを引き立て合っていて、全体のバランスもとても良いです。

次は付属のタレと辛子をつけていただきました。

酢醬油がベースとなっているタレは、酢の爽やかな酸味を運んでくれ、たくさんつけてしまっても塩辛くならないのが嬉しいポイントです。辛子をほんの少しつけることで、ピリリとした刺激が加わり、大人の味わいになりました。いかしゅうまいの風味にやさしいパンチを添えてくれます。

萬坊のいかしゅうまいは、味の主張はやさしいながらもイカのうまみをしっかり感じることができ、食べると思わず笑みがこぼれます。ほろほろと口の中でほどけて余韻が残る感覚に、見た目同様の儚さを感じました。上品に香るイカの風味からは想像もつかないほどに、凝縮されたうまみが口の中を満たす多幸感は一食の価値あり。発売から40年以上愛される理由がよくわかりました。

食卓を彩るおかずとして、はたまたお酒のアテとして――
老若男女みんながおいしく楽しめるいかしゅうまいの包容力に、感動した食事体験でした。

元祖・萬坊が紡ぐ、いかしゅうまい誕生秘話

いかしゅうまいのパッケージの画像

1983年に呼子町で海中レストラン「海中魚処 萬坊」をオープンした萬坊。このお店では地元で水揚げされるイカの活造りが主力メニューでしたが、鮮度が命ゆえに、季節や天候によってはどうしてもイカが余ってしまうことがありました。海が育んだ生命をこのまま無駄にはしたくない――そんな料理人の熱い想いから、数えきれないほどの試作の末に生まれたのがこのいかしゅうまいです。

1985年にお店で提供を始めるとたちまち人気メニューとなり、お持ち帰りを希望する方も後を絶たなかったそうです。そこでいかしゅうまい専用の製造工場が建設され商品化。現在の「呼子萬坊いかしゅうまい」の形となりました。

甘みとうまみが強い新鮮なイカの上身を贅沢にたっぷりと使用。そこに、産地限定の甘みの強い玉ねぎ、大切に育てられた鶏卵、にがりを含んだ地元の海塩、香り豊かなコーン油を合わせます。シンプルだからこそ、ごまかしのきかない素材ばかりです。「口にした瞬間、思わず笑みがこぼれるようなおいしさを届けたい」という料理人の想いが詰まっています。

ちなみに、この「海中レストラン」というユニークな空間を日本で初めて作ったのも萬坊です。海中に潜るように設計された店内はさながら水族館のよう。店内には大きな窓が設置されており、海で泳ぐ生き物たちを間近で眺めながら食事を味わうことができます。「味だけでなく、視覚的にもお客様に楽しんでほしい」という想いが自然と伝わる海中レストランも、萬坊が愛される理由の一つとなっています。

呼子町の魅力を食卓で味わう贅沢

海辺でイカが天日干しにされている画像

実際に呼子町を訪れた際、洗濯物のように干された丸イカに衝撃を受けたものですが、その光景が自然になるほど呼子町ではイカが日常に溶け込んだ存在なのだということがわかりました。

現地で活造りとともに味わういかしゅうまいも格別ですが、お取り寄せしたいかしゅうまいで日々の食卓を彩りながら、呼子町に思いを馳せるのもまた一興。最近では定番のものから、明太子を使用した変わり種まで、さまざまないかしゅうまいが販売されており、選ぶ楽しみが増えています。

ぜひ、あなたも呼子の日常に溶け込むイカを、食卓で楽しんでみませんか?港町のやさしさと料理人の想いが詰まったいかしゅうまいの魅力が、食卓であなたを待っています。

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もっと知りたいあなたへ

佐賀県公式観光サイト 「あそぼーさが」
https://www.asobo-saga.jp
一般社団法人 唐津観光協会 「旅Karatsu」
https://www.karatsu-kankou.jp
萬坊公式サイト
https://www.manbou.co.jp

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