美しきスクエア形状。アウトドアケトルの異端は機能美を楽しみたい

金属加工の町、新潟・三条市
新潟県三条市は江戸時代から続く伝統的な金属加工の町。国内生産の金属洋食器のおよそ90%を製造している。初期の頃のApple社製のiPodを覚えているだろうか。
あの所有欲を大きく満たしてくれた、鏡面加工で美しく磨かれた背面パーツが、実はこの町から送り出されていた、というのは有名な話。
最近では、折からのアウトドアブームでいくつものメーカーがアウトドアギアや刃物などのブランドを擁し、軒を連ねるようになっている。新潟・燕三条の金属製品の産地というブランドバリューは国内を越えて大きく広がった感がある。
そんな新潟県三条市にある「株式会社山谷産業」は「村の鍛冶屋」というズバリの名前を持つアウトドアブランドを展開しており、アウトドア好きたちがよく話題にしている。同じく燕市の「杉山金属株式会社」とのコラボレーションで山谷産業が新しく始めた「TSBBQ」ブランドから発売されたアウトドアケトルを大変に気に入って使っている。
「TSBBQスクエアケトル」
ヤカンである。
アウトドア仕様の四角いヤカン
ひとめ見ると忘れ難いプロダクトで、とにかく美しい。ヤカンなどいうヤボで古い名前で呼びたくないと感じる、端正なスクエアフォルム。注ぎ口も取手も外への出っ張りがない薄型スクエア形状には、こだわりが詰まっているのだ。ひとめ惚れして手に入れた。

アウトドアケトルとして重要な「収納性」も抜群。薄く四角いこのケトルは、バッグやギアコンテナにぴったり収まり、取手部が完全フラットになるという機能もそれに寄与している。美しさだけではなくきちんと機能も網羅されているのだ。
四角く平らな形には理由がある
機能として、とにかく収まりが良い。円筒形、丸型のものも多いアウトドアギアであるが、こう言う四角いものは無駄な隙間ができないので、パッキングをしていると気持ちよくて仕方がないのだ。
底面積の広さからくる湯沸かし時の熱効率の高さもその形を見るだけで一目瞭然。ステンレス製でIH対応もしており使い勝手がいい。ちょっと自宅で1人分のお茶を入れるなどというときにも使えてしまうのだ。きれいな形なので自宅のキッチンでも愛でつつ使いたい。そういう気持ちにさせられる。
アウトドアではフラットかつスクエアなフットプリントからシングルバーナーなどのアウトドアコンロのゴトクの上での安定性にも優れることが容易に想像できる。

フタにはつまみがない。完全なフラットデザインにするためにつまみを装備しないと決め、なおかつハンドルは天板フタ周辺に設けた凹状の溝に収納。未使用時の天板はフラットになりスタッキングの邪魔にならない。本当はフタのつまみはあったほうが便利だとは思う。だとしても旧態然としたD環のつまみだったら間違いなく排除したほうがいいに決まっている。
ひとつひとつのディテールには理由がある
フタに付いたツメが本体の溝にはまる回転ロック式機構。お湯を注ぐときにフタが前に倒れてこないのだ。フタには6カ所の凹凸があり、本体と蓋に隙間がつくられる。これで蒸気を横方向へ逃しハンドルが熱くならないという構造。色々と工夫があって面白い。

注ぎ口もきちんとデザインされている。ここは大事。本体のスクエアな四隅の一角に綺麗に収まるデザインで、奥を見ればきちんとストレーナー機能も盛り込んである。水垂れしにくい溝をつけてあるため小さなカップへ注いだりするのに都合がいい。コーヒードリップもいけるかもしれない。こういう部分がちゃんとできている製品は意外と多くなかったりするので助けられる。
幅162mm×高さ52mm×奥行160mm、重量590g、摺り切り1.0L、適正容量0.7L。ソロないし2人ほどでの道ゆきにピッタリとフィット。言うことがない。
自分の目に入る持ち物を心地よいもので揃えていく
繰り返しになるが、これは本当にひとめ惚れだった。長らく品切れだったなか、偶然直営ECサイトで見つけて即購入。そのあとすぐリロードすると売り切れの表示。なんと最後のひとつであったか! 幸運だった。現在では在庫は安定している様子でほっとする。

ひとめ惚れで飛びついたこのケトルだが、人に見せるための見栄えではなく、自分の深い満足のために見た目にこだわって手元に置きたくなった。自分の目に入る範囲のものを心地よい、満足いくもので揃えていく。そういう自分だけの最適解を作っていくのは楽しいものだ。
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もっと知りたいあなたへ
村の鍛冶屋
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