火と水が育んだ一杯〜熊本ラーメン「黒亭」を自宅で味わう贅沢〜

ふとした時に急に食べたくなるラーメン。わざわざお店に食べに行くのは億劫だけれど、カップラーメンでは味気ない。そんな時に重宝するのが袋麵ですよね。
最近の袋麺は本場の有名店が公式に販売するものや監修を務めるものも珍しくなく、お店で食べるのと遜色ない商品がたくさん販売されています。今回はそんな商品の一つ、「熊本ラーメン 黒亭」のラーメンをお取り寄せして、実際に食べた感想をお届けします。
熊本は火の国・水の国

世界最大級のカルデラ火山、阿蘇山が君臨する熊本県。この地は、火山の恵みとともに生きてきた大地です。
阿蘇の外輪山に囲まれた広大な草原は四季ごとにその色を変え、繊細な自然の美しさを感じさせてくれます。その一方で、噴煙を上げ続ける中岳は自然の力強さに溢れていて、たびたび「火の国」と形容されます。
火山のある地形が育んだ豊富な湧き水も熊本の自然の魅力の一つです。環境省の「名水百選」にも選ばれている白川水源は、実際に訪れるとわかりますが、池の底まで透けて見え、そのまま飲めるほどの清冽さを誇ります。ミネラル分や炭酸分がバランスよく溶け込んだ地下水は、最低限の処理だけで水道水にも利用されているそうで、「おいしい軟水」として有名です。
このことから、熊本県は「水の国」とも呼ばれているのです。
そんな自然の「力強さ」と「繊細さ」を併せ持つ、恵み豊かな熊本の大地は、食にも大きな影響を与えています。
熊本ラーメンの特徴とは?
レビューの前に、熊本県のご当地グルメ「熊本ラーメン」とは一体どんなラーメンなのか改めておさらいしておきましょう。
スープは、豚骨をベースに鶏ガラを加えることで濃厚なうまみとまろやかさを兼ね備えたもの。豚骨ラーメンの元祖といわれている久留米ラーメンをルーツとしていますが、福岡の豚骨ラーメンと異なる最大の特徴は、黒々と輝く「マー油」がかかっているということ。まろやかなスープにパンチを加える名脇役として親しまれています。
お店によって異なりますが、メジャーなトッピングはチャーシュー、キクラゲ、海苔、青ネギなど。熊本県の自然と同じく「力強さ」と「繊細さ」を味わえるこだわりの一杯、それが熊本ラーメンです。
熊本ラーメンの決め手「マー油」とは?

熊本ラーメンの味の決め手である「マー油」。その正体は、刻んだニンニクを揚げて作られる、香り豊かな香味油です。 「ラーメンに入れると魔法のように美味しくなる」ということから、「魔法の油」を語源として「マー油」と名付けられました。熊本ラーメンのスープにふわりと浮かぶ「黒」は、見た目のインパクトだけでなく、味や香りにも深みを与えてくれます。
素材を焦がしながらじっくりとうまみと香りを引き出す技術は、まさに職人のなせる業。その手によって丁寧に仕上げられた「マー油」が、豚骨ベースのまろやかなスープに独特の苦味と香ばしさのアクセントを加えてくれます。
強さとまろやかさ、パンチと優しさ。そうした相反する風味を一手に引き受ける黒い魔法の油は、熊本ラーメンの真骨頂といえるでしょう。
名店「黒亭」の袋麺を実食レビュー!
今回は、熊本の名店「黒亭」の袋麺をお取り寄せして実際にいただきました。用意したトッピングは、チャーシュー、キクラゲ、ネギ、メンマ、半熟卵。付属の有明海産海苔も加えて見た目もお店に引けをとらない仕上がりになったのではないかと自負しています。

作っている途中から、焦がしニンニクの香ばしい香りがキッチン一帯に立ちのぼり、食欲は刺激されっぱなし。思わず「ごくり」と食べる前から期待に喉が鳴ってしまいました。
さて、お待ちかねの実食です!
まずは白濁のスープをいただきます。豚骨らしい、しっかりとしたコクがありながらも、後味はスッキリ。特製マー油のおかげか、「豚骨くささ」はあまり感じません。まさに「コクうまさっぱり」なスープです。
続いては麺。やや太めのストレート麺は小麦の風味がしっかり感じられ、スープのコクにも引けをとらないおいしさです。モチモチとしながらも歯切れが良くて自然に箸が進みます。時折口に入るネギやキクラゲの食感も楽しく、スープを吸わせた海苔がプラスしてくれる磯の風味もいいアクセントでした。
もう一口、もう一口——後を引く美味しさに、いつの間にやら完食・完飲!コク深くもさっぱりとした後味なので、食べ終わりも何だか軽やか。食べ応えもしっかりあって、大満足の一杯でした。
実は、筆者はラーメンを食べることがあまりないのですが、今回いただいた「黒亭」のラーメンのおいしさには本当に驚かされました。「これを機にラーメンに目覚めそう」そんな風に思わせてくれる、一杯のラーメンの持つ力にあらためて「食の楽しさ」を実感しました。
熊本ラーメンの老舗「黒亭」のこだわりと進化
「黒亭」は、1957年(昭和32年)に熊本市二本木で平林夫妻が開業した熊本ラーメン専門店です。初代店主・平林武良氏が好きな絵の具の色「黒」にちなんで店名が名付けられました。武良氏の急逝後は妻の絹子氏が二代目店主としてお店を守り、現在は孫の平林京子氏が三代目としてその味を広く伝えるべく、さらなる発展を目指しています。
「熊本ラーメンの良き伝統を守りながらも進化を続け、皆様に喜ばれるオンリーワンの味をお届けしたい」これは現店主京子氏の言葉です。現状に満足せず、ブラッシュアップを続けながら進化する姿勢は多くのファンを魅了しています。
特殊な巨大窯で一気に炊き上げた豚骨を丁寧に仕分けし、職人の手作業で仕上げるコク深い「豚骨スープ」。黒亭ラーメンの一番の特徴でもある香ばしい「焦がしニンニク油」。石臼引き粉と数種類の小麦をブレンドし、気温や湿度の変化にも注意してつくる「自家製中太麺」。どれも他店とは違う、黒亭のこだわりが詰まったオリジナルです。そのおいしさへの探究心が、県内はもちろん県外でも人気を博しています。
自宅で味わう本格袋麺

熊本の自然と文化、そしてお店の哲学が詰まった「黒亭」のラーメン。袋麺とは思えない香ばしさと深い味わいに、思わず旅気分が広がります。焦がしニンニクの香りが食欲を誘い、まろやかな豚骨スープが心を満たす。そんな一杯が、日常の食卓に小さな感動をもたらしてくれました。
「次は本場で味わってみたい」そんな気持ちがふと芽生えるのも、ラーメンが持つ力のひとつ。熊本ラーメンの魅力を知りたい方、本格派の袋麺を探している方は、ぜひ一度「黒亭」の味を体験してみてください。火と水が育んだ熊本の恵みが、きっと新しい「食の楽しみ」を教えてくれるはずです。
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もっと知りたいあなたへ
熊本県公式観光サイト
https://kumamoto.guide/
熊本ラーメン黒亭 公式サイト
https://kokutei.co.jp/