クルマのダッシュボードに花を飾るという生活〜フラワーベース〜

ダッシュボードに花を飾る、という行為とその歴史
そもそもクルマのダッシュボードに一輪挿し、フラワーベースを取り付ける、というカルチャーはどこからきているのだろう。どうやらその歴史は長いようで、わたしが知っている50年代、60年代のフォルクスワーゲン・ビートル(オリジナルビートル)やTYPE1バスのオプションリストよりも歴史を遡るアイテムのようだ。
昭和の時代、タクシーなどの車中でそれを見かけたものだ。紫に近い深い青のガラス製のものがよく目についた。あの車内一輪挿し。古い日本の路線バスなんかにも付いていた気がする。
ダッシュボードの一輪挿し。それには理由があった
自動車が誕生したのは1769年、江戸時代のこと。250年余りの自動車の歴史の中で100年経たずして件の一輪挿しが登場していたといわれている。
それというのも構造も密閉性も劣る当時のクルマ、触媒もなくガソリンと排気のにおいや外気など室内に流れ込みなかなかに厳しい状況であった。それを緩和するためにフラワーベースを車内に設置して、香りの強い花を現代のエアフレッシュナーなどと同じように使っていたのだとか。大変に興味深い。
1950年代には先出のフォルクスワーゲン・ビートルのメーカー純正アクセサリとしてラインナップされていた。その頃には初期のガソリンなどの匂いを誤魔化す用途から離れてドレスアップパーツになっていたのではなかろうか、など想像ができて楽しい。近年だと98年デビューのフォルクスワーゲンニュービートルに標準装備されていた記憶がある。
鹿児島のカーアクセサリーレーベル「HIGHWAY(ハイウェイ)/ 南国灰道倶楽部」
そんなクルマの一輪挿し、少々流行遅れとなっていたが、昨今密かに復活しつつあるようなのだ。TemuやAmazonで、「カーフラワーベース」で検索するとポツポツと引っかかってくる。そんなカーフラワーベースを鹿児島発のカーアクセサリーブランド、
「HIGHWAY(ハイウェイ)/ 南国灰道倶楽部」
というレーベルで見つけた。

まったく実用とか必需とかいうわけではないのだが、ただ思いのまま欲しくなるものというのがある。それを(特に男性は往々にして)宝物などと言ったりする人も多い。その「宝物」に相ふさわしいものを見つけた。
イラストレーターのオカタオカ氏とデザイン会社「Judd.(株式会社ジャッド)」代表の清水隆司氏、ふたりが打ち出すカーアクセサリーブランド「HIGHWAY(ハイウェイ)/ 南国灰道倶楽部」。「南九州」「クルマ好き」という共通のキーワードで結ばれた両氏がこのブランドを結実させた。
“Driving With Craft”をテーマに大量生産が当たり前のカー用品を再解釈し、木工/陶芸/染色などのアプローチで“CAR CRAFT”を制作。それらを通しより豊かでサステナブルなカーライフを提案します。「HIGHWAY(ハイウェイ)/ 南国灰道倶楽部」
という言葉が「HIGHWAY(ハイウェイ)/ 南国灰道倶楽部」のサイトにあった。
「CAR FLOWER VASE 一輪挿し」というプロダクト
「CAR FLOWER VASE 一輪挿し」は現物を見るとやはりほれぼれする。アートピースに近い感覚をもっているのだ。記憶の中のちょっとくたびれたクルマのダッシュボードについていたフラワーベース。それが質感高く洒落たデザインで現代に甦った。どうにも欲しくなる。
木と焼き物で構成されているが、この質感高い焼き物の部分を作っている鹿児島の陶器ブランドが「ONE KILN(ワンキルン)」。大変センスがいい。メイドイン鹿児島にこだわっている。
鹿児島名物であり、しかしちょっと邪魔にされてしまう桜島の火山灰を土に加えて焼き上げる「Ash」シリーズと同じ質感をもつのが、この「CAR FLOWER VASE 一輪挿し」の黒い方のプロダクト。アップサイクル、サステナビリティという言葉が浮かぶ。白いものもあって、そちらは「CULTIVATE」というライン。薩摩半島・坊津の土と熊本の天草陶石をベースとする。

ECサイトは売り切れが続いているようだが、再販もたまにある様子。ポップアップストアなどが立ち上がる時にも現物が確認できるようだ。気長に待ちたい。
ダッシュボードの一輪挿しが安全やリラックスを連れてくる
このプロダクトの裏コンセプト「交通安全への想い」も気に入っている。緑や花を眺めて穏やかな気持ちに切り替えて、アクセルを踏み込んだりハンドルをキツくひねったりするのを抑えるというもの。そういうの、よい。殺伐とした東京の路上にぴったりだと思っている。
わたくし事だが、わたしにとってのクルマの運転、移動はリラックスが一番大切な要素。リラックスが目的だからクルマの少ない山の中や深夜のドライブが多い。そんな中、その環境が叶わぬ都市部の交通量が多い道でのドライブ時の心の拠り所にしようと思ったのだ。安全運転のお守りにもなる。
穏やかに行こう。穏やかに行きたい。
―――
もっと知りたいあなたへ
Highway
https://highway-kgsm.com/