食のエンターテイナー、日本初のフードスタイリスト:マロンが語る「魅せる料理」の美学と進化

料理を「魅せる」アートへと昇華させた日本初のフードスタイリスト、マロンさん。そのキャリアは40年以上にわたり、料理だけでなく、スタイリング、イベントプロデュース、キッチンツール開発、文化人タレント活動と多岐にわたります。今回は、マロンさんのこれまでの歩みや現在の活動、そしてこれからの展望について、お話を伺いました。
料理との出会いとフードスタイリストへの道
―まず、料理に興味を持たれたきっかけを教えてください。
マロン:子どもの頃、NHKの「きょうの料理」を見て、「料理って面白いなぁ」と思ったのが始まりです。当時は男の子がキッチンに立つのは珍しかったですが、両親や祖母といった家族が私の料理を喜んで食べてくれて、それが嬉しくて。料理のプロセスを楽しむことが好きだったんですね。
―フードスタイリストとして独立されたのは1983年ですね。その経緯はどのような形だったのでしょうか。
マロン:故郷の佐賀県唐津市を離れ、大阪の調理師専門学校で学びました。調理師専門学校を卒業後は、上京して料理研究家やインテリアスタイリストのアシスタントを経験しました。撮影現場に入るたびに、料理をただ作るだけでなく、器や小物を使って料理全体、テーブル全体を「魅せる」ことの大切さを感じたんです。さらにそこから自分自身をプロデュースしたいと思うようになりました。
当時はフードスタイリストという職業が日本には存在していなかったので、前例がない中での独立でした。料理もして、スタイリングもして、レシピも書いて、ということを全部できる人がなかなかいなかったこともあって、現場で重宝していただいたのだと思います。とても忙しい毎日を過ごしていましたね。
センスは盗め、センスは磨け
―フードスタイリストとしてのセンスはどのように磨かれたのかが気になります。
マロン:とにかく日本や海外の雑誌や本を大量に読み漁りました。おかげさまで、次から次へとお仕事をいただいていたんですが、勉強は欠かさなかった。特に洋書からはビジュアルのセンスを学びました。
私は「センスは盗め、センスは磨け」という言葉を大切にしていて、模写から始めるのが一番だと思っています。素敵だなと思うものを真似するということですね。そこからオリジナリティへ繋げていくんです。
90年代から2000年代にかけては文字通りに息つく暇もなく忙しく、雑誌の誌面で、今でいうところの「映える」ビジュアルを作ってきました。当時はインターネットで何でもすぐにわかるという時代ではなかったから、とにかくたくさんの本や雑誌から新しい情報やスタイルを勉強しましたよ。
洋書専門店にも通いました。今はインスタ映え、なんて言ってたくさんの情報をすぐに手に入れられて素晴らしいと思います。

私自身もたくさんの本を出させていただきました。素敵なお皿が大好きで、フランスをはじめとした海外でたくさん買ってきて所蔵しています。そういったものも、当然自分のスタイリングに取り入れてきました。今では所蔵品のほとんどはこの「DigitalKitchen(後述)」に置いてあり、撮影やイベントの際に活躍しています。
―仕事と遊びのバランスについてはどうお考えですか?
マロン:遊びも仕事も本気で取り組むことが大切だと思っています。私は常に、人と会ったり食事をしたり、映画を見たりする時間も自分のために大切にしてきました。そうした経験が、仕事のアイデアやインスピレーションに繋がっていくと思っているんです。
イベントや自分の企画がとても楽しい
―最近の活動について教えてください。

マロン:現在は、これまでのお仕事に加えて、東京・秋葉原にある私がプロデュースしたキッチンのあるスタジオ「DigitalKitchen」で、料理を中心にした商品発表会や勉強会などを行っています。また、オフィシャルファンクラブ「Maron’s Bar」で、ファンの皆さんとの交流の場(イベント)を設けていますので、ぜひ遊びに来てください。
―どのようなイベントですか?
マロン:「マロンの夜会」は、テーマを決めて、それに合わせたお料理を作って皆さんに食べていただく会です。例えば、秋の味覚なら栗!マロンですね(笑)。栗を使った料理やデザートを、素材やレシピの解説をしながら、スタイリングも大切にしたプレゼンテーションで皆さんに召し上がっていただくんですよ。
「Maron With」では、ほかの料理家さんや生産者さんとのコラボレーションで、のおいしい世界観をゲストの皆さんに提供するといったイベントです。私にとっても学びも大きいとても楽しい時間です。

ほかにも、食品やキッチンツールのメーカーさん、NPO団体とのコラボレーションイベントをしたり、契約企業さんの社員の方々向けの福利厚生の一環として、私のお料理でパーティを楽しんでいただいたり。一緒に活動しているフードジャーナリストさんたちと共同のイベントをすることも。さまざまな活動をしているんですよ。
これからの展望とメッセージ

―今後はどのような活動を考えていますか?
マロン:これからも「食=健=美」をテーマに、食の楽しさや美しさを広く皆さんに提案していきたいと思っています。また、若い世代に向けて、フードスタイリングの魅力を伝えていくことも大切にしています。食を通じて、心と体を豊かにするお手伝いができれば嬉しいです。
―読者へのメッセージをお願いします。
マロン:料理は、ただ食べるだけでなく、作る過程や盛り付け、空間演出など、さまざまな楽しみ方があります。ぜひ、自分なりの「魅せる料理」を楽しんでみてください。そして、食を通じて、日々の生活をより豊かにしていただければと思います。
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もっと知りたいあなたへ
マロン オフィシャルサイトMaron’s Net
https://www.marons.net/