2025.5.14

幸福を願い守り継がれる郷土人形、さるぼぼの魅力〜岐阜県・飛騨地方〜

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世界を見ても、また日本のどの地方にも昔から伝わるマスコットや守り神のような人形や置物がありますが、「さるぼぼ」は、岐阜県飛騨地方に伝わる赤い布製のお人形で、特に飛騨高山のシンボルとして知られています。昔から伝わるものに現代的な色合いやデザインを加え、地元のブランド力のアップにも寄与する「さるぼぼ」をご紹介します。

素朴なフォルムから伝わる温かみ

最初は顔のパーツのない真っ赤な体に黒のほっかむりをしたような形にびっくりするのですが、手元に置いて見ているうちにほっこりする素朴なあたたかさのあるお人形です。

「さるぼぼ」という名前は、「猿の赤ん坊」という意味を持っていて、「ぼぼ」は飛騨の方言で赤ん坊のことです。この人形は、昔から子どもや妊婦の無事と幸福を願って作られてきたもので、赤い色には厄除けや魔除けの意味が込められています。赤ちゃんの健康を祈るために赤色が選ばれたといわれています。

さるぼぼには顔の表情がありません。基本的に無地の布そのままです。これは「幸せの形は人それぞれ」という考え方に基づいていて、持ち主の願いに応じて、どんな顔でも想像できるようにするためなのだそう。

現代では、伝統的な赤色以外にも青、緑、ピンクなどのカラフルなさるぼぼが作られ、それぞれ風水に基づいて健康や金運、恋愛運などを象徴するとしているようですが、これは土産物としての新たな定義ですね。

飛騨高山の文化とさるぼぼの役割

飛騨高山は、江戸時代からの町並みが残る「小京都」として知られ、伝統工芸や春と秋に行われる「高山祭り」が有名です。飛騨の匠と呼ばれる職人文化が根付いており、「イチイ一刀彫り」に代表される木工細工や漆器、和紙などの工芸品が世界的にも高い評価を受けています。

日本の各地に多くあることですが、この地域にも家族の絆や地域のつながりを重んじる文化があり、さるぼぼはその象徴として古くから家庭で大切にされてきました。飛騨地方では祖母が孫のためにさるぼぼを手作りして贈る風習がありました。

これは家族の無事を願うだけでなく、世代を超えた愛情の証でもあったでしょう。飛騨高山の観光地では、さるぼぼ人形が家庭の守り神として店頭に飾られている光景もよく見られます。

現代的な新しいさるぼぼも

店頭で売られているさるぼぼは、地元の飛騨の職人がひとつひとつ手作りしています。

今では伝統的な赤いさるぼぼに加え、現代的なデザインや地域の特産品をモチーフにした新しいさるぼぼも各社によって製作されています。

また、飛騨高山体験館「さるぼぼ工房」ではオリジナルのさるぼぼ作りを体験できるので、お子さまや外国からの観光客に人気のスポットになっています。

近年では、さるぼぼをモチーフにしたキーホルダーやストラップ、雑貨が販売されたり、大手コンビニエンスストアチェーンの地元店舗オリジナル商品として販売されたりして、若者や観光客に人気を博しています。また、地元企業とコラボした限定商品も話題となり、飛騨高山のブランド力向上にも貢献しています

2007年には飛騨のさるぼぼ製造協同組合によって「飛騨のさるぼぼ」として地域団体商標に登録されました。

表情がないながらも、どこかユーモラスで可愛らしい「さるぼぼ」。飛騨高山を訪れたら、あなたもきっと手に取ってしまうはず。

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もっと知りたいあなたへ

飛騨のさるぼぼ製造協同組合
https://sarubobokumiai.wixsite.com/sarubobo

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