箱根湯本温泉と芦ノ湖、癒しの時間を巡る〜神奈川県足柄下郡箱根町〜

ロマンスカーの車窓から始まる旅
新宿駅のホームで待つロマンスカー。外観はスムーズな流線形を描き、どこか未来的な雰囲気が漂う。車内アナウンスが響く。「間もなく発車いたします」その一言で、日常から切り離された旅が始まる感覚。胸の高鳴りが隠せない。

小田原を通過する頃、車窓から箱根の山々が見えてくる。緑豊かな山肌が太陽の光を受けてキラキラと輝き、その美しさに思わず息をのむ。車内では景色に夢中な家族連れの声が聞こえる。「あれが箱根?」子どもの声に母親がうなずく。それぞれの旅が今、この瞬間に始まっているのだと実感する。
箱根湯本に近づくと、車窓から湯けむりが見える。温泉地に着いたという実感がじわじわと湧いてくる。
箱根湯本の文化と景観
箱根湯本駅に降り立つと、まず目に飛び込むのは歴史を感じさせる駅舎。その周囲には、古き良き温泉地の風情をたたえた街並みが広がる。石畳の通りには、湯けむりが漂い、遠くから湯の香りが運ばれてくる。道端には和菓子店や土産物屋が軒を連ね、旅人を魅了する。
たとえば、「箱根湯本温泉まんじゅう」専門店で味わえる一口サイズの甘さ控えめな饅頭は、温かい緑茶との相性が抜群だ。足を進めると、観光客たちの姿も多い。もちろん今の時代、半数が海外からのインバウンドである。
浴衣姿で足湯を楽しむ人々の笑顔も目を引く。足湯スポットでは、温泉成分がたっぷり含まれる湯に触れられる。気軽にリラックスできる箱根湯本ならではの光景。こうした足湯施設は地元の人たちにとっても憩いの場であり、旅人と地域が繋がる瞬間でもある。

さらに、箱根湯本には歴史的な建築物が点在する。たとえば、江戸時代にさかのぼる「玉簾神社」。神社の静かな雰囲気は、観光客にとって心の安らぎの場となっている。特に樹齢数百年の杉の木々が並ぶ参道は、自然と文化の融合を実感できる。
観光だけでなく、箱根湯本の町は地元の職人たちの技が光る場所でもある。たとえば、竹細工の店では、手作りの箸や小物が並び、それぞれに独特の温かみを感じる。職人が語る竹細工の魅力に耳を傾けるのも、旅の楽しみのひとつだ。
街の風景には川も欠かせない。箱根湯本駅を流れる早川は清流であり、その川沿いの散策は都会では味わえない贅沢なひととき。耳を澄ませば、川のせせらぎと鳥のさえずりが静かに響く。
箱根湯本は単なる観光地ではない。日本の伝統的な温泉地文化とその町の人々の息遣いが感じられる特別な場所なのだ。
温泉と湯の癒し
旅館に到着。玄関をくぐると、畳の柔らかな香りとおもてなしの声が迎えてくれる。夕食前に早速温泉へ向かい、露天風呂へと足を進める。湯けむりが漂う中、山々の稜線が遠くに見える。風に揺れる木々の音と、遠くで聞こえる川のせせらぎが心を癒してくれる。
心地よい湯に浸かりながら、ふと空を見上げる。澄んだ箱根の空には時折うっすらとした雲が流れ、そのスッキリとさわやかな光景に引き込まれてしまう。
湯上りには浴衣姿で館内を散策。この地域の温泉旅館では、抹茶や地元名物の和菓子が振る舞われることも多い。ふんわりと甘い菓子の味が、身体中に広がる温泉の温もりと絶妙にマッチする。
箱根の夜と朝の風情
ひと風呂浴びて夕食までの間に、旅館から歩いてすぐの芦ノ湖へ向かう。夜の湖面は静寂に包まれている。湖を渡る夜風に吹かれながら見る湖畔の灯りは幻想的で、水面に映り込む光景はまるで夢の中の世界のよう。夜の湖畔の静けさの中、ゆっくりと脚を運ぶ散歩は心を落ち着かせる贅沢な時間だ。
翌朝、芦ノ湖畔のロープウェイ乗り場へ足を運ぶ。箱根ロープウェイは山と湖を一望できる絶景スポット。ゴンドラが滑らかに上昇し始めると、眼下には広がる芦ノ湖がその姿を現す。湖面が太陽の光を浴びてキラキラと輝き、遠くには富士山の優美な稜線が浮かび上がる。
その景色に心が奪われる瞬間。ゴンドラの心地よい響き、耳元には風の音。静かな旅路にさらなる余韻をもたらす。

山頂に到着すると、空気が澄んでいて、箱根の雄大な自然を肌で感じられる。展望台ではカメラを構える人々がたくさんいて、みんながこの美しい風景を共有していることにほっこりする。ロープウェイの旅はただの移動手段ではなく、箱根を全身で感じることができる特別な時間だ。
温泉のぬくもり、山と湖に囲まれた絶景、そして文化と自然が織りなす特別な空間。それらすべてが、日々の喧騒から解放される贅沢な時間を与えてくれた。新しい景色と出会いながら、癒しと静寂に満ちたこの旅は、心に深く刻まれる思い出となるだろう。また戻ってきたいと思える場所が、ここにはあった。
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