しっとり、ほっくり。秋冬に寄り添う恵那川上屋の栗きんとん
皆さん、秋冬の銘菓といえば何を思い浮かべますか?柿やいちじくが豊富に出回り、リンゴや柑橘類がおいしい季節でもありますが、やはり定番は「栗」を使ったスイーツではないでしょうか。洋菓子のモンブランやマロンプリン、和菓子では栗ようかんや栗饅頭――栗は日本人にとって秋の到来を告げる、季節の贈り物といっても過言ではありません。
今回はそんな栗スイーツを代表する「栗きんとん」のご紹介です。
岐阜・美濃発祥の秋冬銘菓 栗きんとん
栗きんとんは、栗に少量の砂糖を合わせて炊き、茶巾で絞って作る岐阜県美濃地方発祥の伝統菓子です。
KURAFTでは過去に、その元祖ともいわれている中津川市「すや」の栗きんとんをご紹介しています。
岐阜県の中でも、中津川市や恵那市などの東濃地域は栗の名産地ということもあり、栗きんとんを取り扱うお店が多数あります。シンプルなお菓子ですが、だからこそお店ごとの違いがはっきりと出るので、食べ比べをして違いを楽しむ方も多いのだとか。
今回は恵那市に本社を構える恵那川上屋の栗きんとんをいただく機会があったので、すやの栗きんとんを食べた記憶も辿りながら、違いも含めたレビューをしていきます。
恵那川上屋の栗きんとんを実食!しっとり甘みの余韻

恵那川上屋の栗きんとんは、外箱に赤と青で栗の絵が鮮やかに描かれており、とてもかわいらしい印象です。箱を開けると、これまた栗の絵が描かれた和紙の包装に包まれた栗きんとんがお目見え。上部が茶巾絞りのようにキュッと絞ってあるのは栗きんとんならではの包み方ではないでしょうか。その上品な包みを開き、お皿に載せて半分に割ってみました。

ナイフを入れた感覚は、想像以上のしっとり感。ポロポロと破片がこぼれてしまうこともなく、適度な水分量だということが食べる前からわかります。
口に含んでみると、思っていた通りしっとりとした食感で、栗そのものの味わいがふわっと口中に広がります。すやの栗きんとんは甘さが控えめで、口に含むとほどけるようなホロホロ食感、加えて栗の粒が大きめに残されていましたが、恵那川上屋の栗きんとんはいかに――
栗本来の甘みに加えて、しっかりと砂糖の甘みも感じます。そして、水分をしっかりと含んだペースト状の栗は口の中に長く留まり、ホロホロというよりもネットリ。栗きんとんならではのくちどけの良さが併せ持つ儚さ、これを恵那川上屋のしっとりした栗きんとんは少しだけ延命してくれるようでした。小さめの栗の欠片がふんだんに入っていることで、どこを食べても偏ることなく栗の風味を感じられるのも、個人的には嬉しいポイントだと感じます。
恵那川上屋の栗きんとんは、すやとは甘みも食感も全く異なり、もはや別のお菓子。栗きんとんに求めるものによって好みが分かれるのかもしれませんが、別物としてどちらも「おいしい」ものです。
原材料は栗と砂糖のみ、というシンプルの極みのような和菓子である栗きんとん。それなのに、お店によってここまで味や食感に違いがあるとは――正直驚きでした。余計なものは入れない。だからこそ素材の味が引き立ち、栗のおいしい部分を口の中いっぱいに広げてくれるような伝統菓子。この一口は、とても贅沢な体験でした。
口に含むとパサつく感覚が苦手、という方もいるようですが、そんな方にこそ恵那川上屋の栗きんとんをおすすめします。
栗スイーツの革新を続ける菓子舗 恵那川上屋
1964年創業、2024年に60周年を迎えた恵那川上屋ですが、栗きんとんを取り扱う東濃地域のお店としては比較的新しいといえるかもしれません。初代社長の鎌田満氏が中津川市の老舗和菓子舗「川上屋」からのれん分けの形で独立して立ち上げたお店が始まりとなっています。
開店後数年は、栗きんとんの他に栗羊羹や栗納豆など、栗を使った和菓子を中心に販売していましたが、恵那市には洋菓子店がなかったことから洋菓子作りを猛特訓し、1972年に洋菓子の販売も開始したそうです。今ではモンブランやバターサンド、栗のシュトーレンなど多数の洋菓子を販売しており、栗きんとんと並ぶ人気を誇るものも。和洋多岐にわたる豊富な品揃えで何度行っても飽きることなく楽しめると評判です。
そしてもう一つ、恵那川上屋の特徴は栗きんとんをアレンジしたメニューが豊富にあるということ。創業からロングセラーとなっている羊羹の「くり壱」は一見すると普通の羊羹ですが、中には栗きんとんがギッシリ。羊羹のモチモチ食感と栗きんとんのホックリとした食感が一度に楽しめると人気の商品です。
洋菓子部門にも「栗きんとんティラミス」に「栗きんとんノエル」、「栗きんとんタルト」と、和と洋を美しく掛け合わせた商品が多数ラインナップされています。和菓子好きも洋菓子好きも、皆が楽しめるモダンテイストな菓子舗、それが恵那川上屋なのです。
栗づくりから地域貢献へ~恵那川上屋の挑戦~

「栗菓子のおいしさは栗づくりから」という考えのもと、2004年には農業部門として農業生産法人の「有限会社 恵那栗」を立ち上げ、自社農園で栗を栽培をしながら素材や商品の品質向上に努め続ける恵那川上屋。さらに2020年には栗農園で培ってきた知識と技術をいかして「株式会社 恵那山ファーム」を設立。栗栽培の閑散期を補えるようにトマトの栽培を開始したり、食品ロスの解消に繋がるよう野菜の乾燥や粉砕などの一次加工を行ったりと、地域課題や社会課題への取り組みを進めています。
「よりおいしい商品を届ける」というのは当たり前に、その先にあるさまざまな課題に目をつぶることなく向き合っていくその姿勢は、既存商品や企業の価値を高め、そして地域にも貢献しているのです。
東京でも味わえる恵那川上屋の世界
恵那川上屋は岐阜県を中心に複数の店舗を展開していますが、2024年11月には東京都目黒区に「栗ここん 恵那川上屋 東京」をオープン。店舗内に工房を併設しているので、できたての生菓子をいただくこともできます。栗きんとんなどの定番和菓子から、オシャレな洋菓子に店舗限定の「八雲モンブラン」まで、実に多種多様な栗菓子が並びます。
都立大学駅からもほど近いこちらのお店は栗好きにはたまらない空間です。伝統の栗きんとんを東京でも味わえるということで、連日多くの客で賑わいます。あなたも、栗スイーツで秋冬の訪れを感じてみませんか?
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