2025.9.26

大人の恋愛革命~シニア婚活が変える地域と人生の新たな形~

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還暦を過ぎてから恋をする——少し前まで「珍しいこと」だと思われていたかもしれません。しかし、現在の日本では、シニア世代の婚活が一つの社会現象として密かに注目を浴びています。日本仲人協会の調査によれば、2022年以降、50歳以上のお見合い数が増加しているそう。人生100年時代といわれる今、60代、70代での新たな出会いは、個人の幸せだけでなく、地域社会全体に活力をもたらす重要な要素として認識されるようになりました。

人生100年時代がもたらしたシニア婚活の変化

「シニア婚活」という言葉は、現代の日本社会に定着しました。その背景には、日本の社会構造そのものの変化があります。

まず注目すべきは、単身高齢者の急激な増加です。2020年国勢調査によると、50歳時未婚率は男性が28.3%、女性が17.8%で、年々増加傾向にあることが明らかになっています。これは、「結婚して家庭を築く」という従来の価値観による人生設計を、多くの人が行わない・行えないという現実と、人生設計そのものの多様化を示しているといえるでしょう。

さらに、熟年離婚率の上昇も大きな要因の一つです。子育てが終わり、定年を迎えた夫婦が、それぞれの人生を見つめ直す中で、新たな道を選択するケースが増えています。そして離婚後、一人の時間を大切にしながらも、やがて「もう一度、誰かと歩んでいきたい」と考える人も増えているようです。

経済的な安定も、シニア婚活の後押しをしています。現在の60代・70代は、経済基盤が比較的整っており、自分の趣味や関心事に時間とお金を投資できる世代です。結婚相談所の費用や婚活イベントへの参加も、現実的な選択肢として考えられる余裕がある層といえます。

地方創生と連携したシニア婚活の新たな潮流

バス旅行のイメージ画像

シニア婚活の広がりは、個人間の現象にとどまりません。全国各地の地方自治体が、婚活支援を町おこしや人口減少対策の施策として位置づけるようになっています。まだまだシニアへの門戸が広く開かれているとはいえないものの、いくつかの自治体ではシニア限定の婚活イベントが実施されています。

関東地方のある市では、地域おこし協力隊が中心となって企画する婚活バスツアーが人気を博しました。出会いの場の提供にとどまらず、地域の魅力を体験できる観光要素を組み合わせることで、参加者は地元のおいしい食材を味わい、歴史ある街並みを散策しながら、自然な形で交流を深めることができることから、注目を集めたようです。

このような取り組みの背景には、人口減少と高齢化という共通課題があります。地方自治体にとって、婚活支援は単なる結婚促進ではなく、関係人口の創出、移住・定住促進、地域経済の活性化といった複合的な効果を期待できる政策として認識されています。

全国的に見ると、温泉地でのゆったりとした婚活イベント、農業体験を組み合わせた出会いの場、地元グルメを楽しみながらの交流会など、その土地ならではの魅力をいかした企画が各地で展開されてきました。

シニア世代ならではの婚活の特徴と魅力

シニア婚活には、若い世代とは異なる特徴があります。実際の婚活現場では、年齢を重ねたからこそ得られる出会いが生まれているようです。

多くの結婚相談所では、60代後半の女性会員が徐々に増加傾向にあります。配偶者を亡くした方が「第二の人生に寄り添いあえる伴侶を見つけたい」という想いで入会するケースが目立ちます。当初こそ戸惑いを感じる方が多いものの、専門カウンセラーのサポートを受けながら、価値観の合うパートナーと出会う方が少なくありません。お互いの健康を気遣いながら、旅行や趣味をともに楽しむライフスタイルを築く夫婦が増えているのだといいます。

また、定年退職を機に婚活を始める70代前後の男性も珍しくありません。特に離婚経験者同士の再婚では、それぞれの人生経験を経て、お互いを深く理解し合えることで関係性が築きやすいという特徴があります。結婚後は夫婦揃って地域のボランティア活動に参加するなどし、地域コミュニティの中で新たな役割を見つける方も多く見受けられます。

シニア婚活の成功要因として共通して挙げられるのは、「人生経験の豊かさ」と「相手を思いやる心の余裕」です。若い頃とは違い、見栄を張ったり、理想を追い求めすぎたりすることなく、現実的で温かい関係を築けることが、シニア婚活の大きな強みといえるかもしれません。

シニア婚活の課題と解決への道筋

マッチングアプリが表示されたスマートフォンの画像

一方で、シニア婚活には特有の課題も存在します。

最も大きな課題の一つは、出会いの機会の限定性です。

職場での出会いがない定年後の世代にとって、自然な出会いの場は限られています。また、デジタル技術に不慣れな方も多く、マッチングアプリなどの活用に抵抗を感じるケースも少なくありません。その上、健康面や介護の問題も避けて通れない課題です。将来の健康状態や、既に要介護状態の親の存在など、若い世代にはない複雑な事情を抱えている場合が多いのです。

さらに、家族からの理解を得られるかどうかも大きなポイント。成人した子どもたちが親の再婚に反対するケースや、遺産相続に関する不安から家族関係がぎくしゃくする事例も見られるのが実情です。現在ではこれらの課題に対して、さまざまな解決策が模索されるようになりました。結婚相談所では、シニア専門のカウンセラーが配置され、成婚に向けて年齢層に応じたきめ細かいサポートが提供されています。

また、「お見合いパーティ」のような作られた形ではなく、地域のシニアサークルや趣味のサークルなど、自然な形で出会える場づくりも進んでいます。健康面の課題については、お互いの状況を理解し合った上で、支え合える関係を築くことの重要性が認識されており、「介護し合う関係」ではなく、「それぞれが自立しながら、困った時に助け合える関係」を目指す考え方が浸透しつつあるのです。

社会全体で支えるシニア婚活の未来

仲良く写真を撮る老夫婦の後ろ姿の画像

シニア婚活の発展は、日本社会全体にとっても真剣に考慮すべきことといえそうです。

経済面では、シニア層の消費活動の活性化が期待できます。新しいパートナーとの生活のために住居を整えたり、二人で旅行を楽しんだりすることなどにより、多方面にわたる経済効果が生まれるでしょう。婚活関連サービス業界の発展も、新たな雇用創出につながります。

社会保障の観点からも、シニアの結婚は重要です。一人暮らしの高齢者の孤独死や認知症の進行といった問題に対して、パートナーの存在は大きな予防効果があります。お互いを気遣い、支え合うことで、より長く健康で自立した生活を送ることが可能になると予想されるからです。

さらに、地域コミュニティへの参加も活発になることが期待されます。一人では参加しにくい地域イベントも、パートナーがいることで積極的に関わるようになる方が多く、地域の活性化への貢献につながるというわけです。

今後、シニア婚活がさらに発展していくためには、社会全体の理解と支援が欠かせないものとなります。年齢を重ねてからの恋愛や結婚を温かく見守る社会的雰囲気の醸成、自然で多様な出会いの場の提供、専門的なサポート体制の充実など、さまざまな角度からの取り組みが必要です。

人生100年時代において、60代、70代はまだまだ人生の中盤といえるでしょう。これまでの経験をいかしながら、新たな出会いと幸せを求めることは、決して特別なことではありません。シニア婚活は、個人の幸福追求と社会の活性化を同時に実現できる、まさに「大人の恋愛革命」と呼ぶにふさわしい現象なのです。

愛に年齢制限はありません。人生の後半戦をより豊かに、より温かく過ごすために、シニアの恋愛・結婚、そしてそのためのシニア婚活という選択肢を、社会全体で受け入れていくことが、これからの日本社会に求められるものとなりそうです。

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もっと知りたいあなたへ

日本総研:ミドルシニア未婚者のキャリア(結婚や働き方等)に関するアンケート調査結果」レポートの公表
https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=108505
Withnews:マハラジャで〝シニア婚活〟の男女「結婚がゴール」ではない出会いも
https://withnews.jp/article/f0250715000qq000000000000000W00110101qq000028103A

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