2025.8.7

日本三大うどんとは?地域に根差す「麺の個性」を味わい尽くす

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今日は麺類が食べたい気分だな、という時に何を食べますか?

うどん、そば、ラーメン、パスタ…さまざまありますが、私は高確率でうどんを食べます。幼少期から好んでよく食べていたということもありますが、さっぱりつるりといけるのにしっかりした食べ応え。これはうどんならではだと思うのです。

今回はそんなうどんにフォーカスを当ててまいります。

一年中楽しめる国民食、うどん

言わずと知れた国民食、うどん。主食としてお米の代わりに食べることも多いのではないでしょうか。

温冷どちらでもおいしく食べられるので、冬の寒い日に熱々の汁や具材と一緒に食べて身体を温めたり、食欲の衰えがちな夏の暑い日にさっぱりと食べて手軽に栄養補給をしたり。まさに万能選手といえる存在です。

うどんとは、小麦粉に水を加えて練り合わせ、麺に加工したものを指すもので、「冷麦」や「素麺」などの細いものや、「きしめん」のように平たいものも、広義にはうどんの一種といえます。

中国伝来 うどんの歴史

うどんの歴史はかなり古く、奈良時代から平安時代の頃に中国から伝わったといわれています。諸説ありますが、遣唐使によって日本に伝えられたとする説が有力です。伝来当初は中国に倣い団子状だったといわれていますが、江戸時代に現在の糸状の麺が主流となり、各地方で独自の進化を遂げながらその地に根付いていきました。

また、江戸時代には街中にうどん屋が登場し、庶民の味として定着しました。

日本三大うどん:やはり一つめはあのうどんです

「日本三大うどん」と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。

うどんの消費量が全国一位、「うどん県」として自治体を挙げてアピールしている香川県の「讃岐うどん」が第一党であるのは疑いようのない事実でしょう。

釜玉讃岐うどんにつゆがかけられている画像

加水率40%以上のモチモチの太麺は手打ち式と呼ばれる製法で、人の手により丁寧に作られます。他の地域のうどんとの大きな違いはその「コシの強さ」。伝統的な足踏みにより、強いコシを引き出しています。

10分から15分、じっくりと時間をかけて茹であげた熱々の麺に卵を絡め、つゆやしょうゆをかけて食べる「釜玉うどん」や、濃いめの出汁をかけて食べる「ぶっかけうどん」などが人気です。

香川県は温暖で雨が少なく小麦栽培に適した気候であったことに加え、塩や出汁に使われるイリコなどの良質な材料が揃っていたことから、うどん文化が根付き、大きく発展したと考えられます。

香川県内には多くのうどん店が軒を連ね、その数なんと500店以上!これは県内のコンビニエンスストアの数よりも多いといいますから驚きです。製麺所を兼ねたお店も多く、香川県のファストフード、ソウルフードとして地元の方に愛されています。

日本三大うどん:二つめは、一般人は食べられなかった献上品

さて、「日本三大うどん」として二つめに名前が挙がるのは秋田県の「稲庭うどん」。

讃岐うどんとは異なる手延べ製法で作られる平たい形状の細麺は、滑らかな舌触りとツルツルとした喉越しが特徴です。

氷の上にのった冷たい稲庭うどんと薬味の画像

短めにさっと茹でた麺は半透明で見た目も涼やか。温かいお出汁とともに食べてももちろんおいしいですが、氷水で締めた麺をつけだれに絡めてサッパリと味わうのがおすすめです。

江戸時代から地元産の小麦粉を使って製造され、藩主への献上品として珍重されてきた稲庭うどんですが、一般に知られるようになったのは1972年(昭和47年)以降とのこと。江戸時代から門外不出として受け継がれてきた製造方法や粉の配合を創業家の佐藤養助が家人以外に初めて公開したことで秋田県のみならず、全国にそのおいしさが広がりました。

秋田県湯沢市の稲庭地区は奥羽山脈に囲まれた豪雪地帯であるため、古くから冬の保存食として小麦を栽培していました。そして農作業ができない冬の期間に、この小麦を使って長期保存が可能な乾麺のうどんを作り、長い冬が過ぎるのを待っていたというわけです。この山々に囲まれた地形は清らかな水が豊富であったことも、うどんの製造には適していました。

日本三大うどん:三つめとは?? 

では、最後に日本三大うどんの三つめをご紹介!といきたいところですが、これが何とも難しい。

調べれば調べるほど、三つめは諸説入り乱れて絞り込みが困難なのです。

あなたは「讃岐うどん」、「稲庭うどん」とあともう一つ、といわれたらどこのうどんを思い浮かべますか?

せっかくなので全てご紹介してしまいましょう。候補①は群馬県の「水沢うどん」です。

ざるに盛られきゅうりと海苔がのった水沢うどんの画像

群馬県渋川市伊香保町、伊香保温泉街からもほど近い水沢地区で愛される水沢うどんは、手打ち製法ならではの強いコシが特徴。地元産の小麦粉と水、塩だけというシンプルな材料で作られるその麺は、透き通るような白い色をしており、喉越しが良いのも魅力です。冷たいざるうどんとして、つけだれにつけて食べるのが一般的です。

候補②は長崎県の「五島うどん」。

たっぷりのネギと大根おろしがのった五島うどんの画像

長崎県の五島列島で作り続けられてきた五島うどんは、食用の椿油を塗布しながら引き延ばす手延べ式乾麺で、長く茹でても伸びにくいのが特徴です。断面が丸いその見た目もさることながら、モチっと弾力のある麺は生パスタに近い、と表現する人もいる特徴的な食感です。

そして候補③、最後は富山県の「氷見うどん」です。

かきあげがのった氷見うどんの画像

稲庭うどんと似た手延べ製法で作られる氷見うどんですが、麺を作る工程の中で手でこねたり足で踏んだりする手打ちの製法も取り入れているため、手延べ式でありながら強いコシと喉越しが楽しめます。また、さまざまな太さの麺があるのも魅力の一つ。その時々の気分で選んでみるのも楽しいかもしれません。

土地に根付く味、うどんが繋ぐ地域と暮らし

日本の食卓に当たり前のように存在するうどん。その一杯には、気候や風土、原料へのこだわり、職人の手仕事、そして土地に暮らす人々の知恵と工夫がぎっしり詰まっています。讃岐・稲庭・水沢・五島・氷見——いずれのうどんも、ただおいしいだけでは語りきれない、地域の暮らしや想いを映し出しているのです。

例えば、冬の保存食として工夫された稲庭うどんや、讃岐の乾いた気候だからこそ根付いた足踏み文化。それぞれの土地に宿るうどんのかたちは、日々の生活のリズムや人々の営みに寄り添ってきた証でもあります。

うどんを味わうことは、その地域の風景や人々の温度に触れること。それぞれの地域のうどんに思いを馳せながら、次の旅先や今晩の献立を選んでみるのも素敵ではないでしょうか。

さあ、日本のうどんの世界はまだまだ奥深い。あなたが出会う次の一杯は、どんな土地と物語を語ってくれるでしょう。

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もっと知りたいあなたへ

うどん県旅ネット(香川県観光協会)
https://www.my-kagawa.jp/udon
秋田県稲庭うどん共同組合
http://inaniwa-udon.jp/
渋川伊香保温泉観光協会
https://www.ikaho-kankou.com/eat/udon/
五島手延うどん共同組合
https://www.goto-udon.jp/
農林水産省「にっぽん伝統食図鑑」
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/traditional-foods/menu/himi_no_udon.html

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