五十路に入ってからは、気づけば旅先を選ぶときに、華やかな刺激よりも心を整えてくれる静けさを求めている。長野県・軽井沢町の信濃追分宿は、まさにそうした「大人のための旅先」だ。華やかな軽井沢の隣にありながら、観光地の喧騒を一歩離れるだけで、空気の密度が変わったような落ち着きが訪れる。 ここには、時の流れの残響や人の営みの痕跡が静かに息づき、旅人を温かく迎え入れてくれる深い懐がある。歴史の面影を伝える宿場町である追分。文学、工芸、食文化などから多面的にその魅力を紹介してみたい。 中山道と北国街道が分岐した追分宿の歴史 信濃追分宿は、中山道六十九次の二十番目の宿として栄えた町である。江戸から京都へ向か...