2025.8.12

四季を感じる博多の老舗・鈴懸の和菓子〜心に溶ける味・心葉(とろろ)〜

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博多といえば、何を思い浮かべるだろうか。700年以上の歴史を刻む博多祇園山笠、活気あふれる商人の町、そして伝統と現代が調和する街並み。この街には、まだまだ知られていない魅力が隠されている。歴史が息づく石畳の道を歩きながら、博多の地で受け継がれてきた和菓子の物語に耳を傾けてみよう。

この町から「鈴懸」は始まった

博多祇園山笠の画像

福岡県・福岡市、中心部の繁華街である天神から地下鉄で1駅。たどり着いたのは博多区上川端町にある中洲川端駅。川端町は博多で最初に栄えた商業の町。「博多祇園山笠」の町としても知られている。

駅から南東方向に進んだ先にある、博多の総鎮守「櫛田神社」。博多祇園山笠は櫛田神社に山笠を奉納する伝統的な神事であり、国の重要無形民俗文化財に指定されている。諸説あるが、1241年(仁治2年)から784年も続いているのだという。毎年7月1日から15日まで開催され、特に15日の追い山笠では午前4時59分から始まるにも関わらず、櫛田神社は観客で溢れ返り、町中が人々の熱気で包まれる。

参拝を終えたら、来た道を戻るように、アーケード街「川端通商店街」へ。博多で最も歴史のあるこの商店街は、博多川に沿って約400m続き、130を超える店舗で賑わっている。中ほどにある店舗「川端ぜんざい広場」では、豪華な飾り山笠を眺めながら、「日本一甘い」と評判の川端ぜんざいを楽しもう。ぜんざいの提供日は、祭りの期間中は毎日、それ以外は金・土・日のみとなっている。

演芸専門劇場・博多座の入り口の画像

川端通商店街を抜けた先には九州最大級の演劇専用劇場・博多座が待ち構えており、ミュージカルや歌舞伎・音楽コンサート・落語など、さまざまな演目を月替わりで公演している。博多ならではのお土産や公演ごとの限定グッズが、観光気分を盛り上げてくれる。

毎年6月には近くの博多川で歌舞伎役者がご当地到着を船に乗ってお披露目する伝統行事「船乗り込み」が行われ、博多の初夏の風物詩として地元の人はもちろん、観光客にも大きな盛り上がりを見せている。

このように中洲川端駅周辺では、櫛田神社や川端通商店街、博多座といった、博多の文化が賑やかに出迎えてくれる。そんな中にあるのが鈴懸本店だ。福岡銀行をはじめ名だたる企業が入居する、駅直結の「ふくぎん博多ビル」1階に位置する鈴懸は、通りから店の中がよく見える造りとなっており、町を歩いていると自然と店に吸い込まれそうになる。

鈴懸は1923年(大正12年)創業。100年以上の歴史を誇る、博多生まれの和菓子店だ。博多区上川端町に本店を置き、福岡に5軒、東京に3軒店舗を構えている。「厳選した自然素材に由来する味を守り、技を極め日々の暮らしが豊かになる和菓子づくりを続けてまいります」―ここに鈴懸の和菓子作りに対する想いが詰まっている。

雪玉のような白くて丸い姿の「心葉」

心葉1個を皿に乗せて半分に切り分けた画像

少し透けた和紙のような包装。表面の右側には「心葉」の文字。包みを開けると甘い香りがふんわりと漂い、雪玉のような白くて丸いお饅頭が姿を現す。小ぶりな見た目とは対照的に、持ってみると意外とずっしりしている。

一口食べると中からこしあんが。小豆のこしあんが口の中でほろりと崩れる。普通の山芋よりも粘り気の強い「つくね芋」を使った生地はしっとりと柔らかく、まるで雲を食べているよう。生地とこしあんがそれぞれの味を引き立て、心に溶けていく。「お疲れさま」と言ってくれているような優しい甘さが体中に染み渡る。シンプルな見た目、シンプルな甘さ。だけどその中に、どこか懐かしさを感じる。

季節を五感で味わう、鈴懸本店の楽しみかた

心葉の箱に同梱されている鈴懸のお品書きの画像

心葉は「草月(小麦粉と、もち米粉をあわせて焼き上げたしっとりとした皮で小倉あんを包んだお菓子)」や「蕨餅」といった鈴懸の人気商品とのセットもあり、竹籠に入った「百菓行李」や、掛け紙で包装される「すずのね」は贈り物におすすめ。時期によって包装の色やデザインが変わり、季節を感じられるものとなっている。

掛け紙は月ごとのデザインだけでなく、母の日や父の日、端午の節句、干支、七五三、山笠などのデザインも期間限定で楽しめる。また、鈴懸では和菓子を1個から購入できるため、さまざまな和菓子を気軽に楽しめるのもうれしい。

鈴懸本店には菓舗と茶舗が併設されている。
菓舗には長さ9mのショーケースがあり、その中に人気の和菓子がずらりと並んでいる。背景となる壁一面が黒漆喰磨きとなっているのは、ショーケースに置かれた和菓子たちが最も映えるように、その存在を引き立たせるためにこのような店舗デザインにしたのだそうだ。

本店限定の茶舗は落ち着いた雰囲気の和モダンな店で、自店製のアイスを使った人気メニュー「すずのパフェ」や懐かしい味わいの「ナポリタン」、「焼カリー」など、ここでしか食べられない甘味や食事が楽しめる。お昼時にはスープ、サラダ、デザートがセットになった「本日のランチ」も提供される。博多座での観劇などの後に訪れる人も多く、この辺りの一息つける美味しいスポットとしても人気を集めている。

川端町の歴史ある街並みとともに、博多の誇る鈴懸の和菓子を味わってみてほしい。

ライター:九州大学 工学部 原

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もっと知りたいあなたへ

鈴懸
https://www.suzukake.co.jp/
YOKA NAVI(福岡市観光情報サイト)
https://yokanavi.com

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