
大阪から電車に揺られて約2時間。車窓から見える景色は都会の喧騒を忘れさせる和歌山の自然のパノラマ。青々とした山々や清流の川沿いが旅人の心を和らげ、まるで時を超えたかのような感覚を覚えます。そして到着したのは、熊野本宮大社へ続く熊野古道・中辺路の玄関口、和歌山県・田辺市の「紀伊田辺駅」。
ここは、歴史と自然が心地よく調和した、旅の始まりにぴったりの町です。歴史ある建物や、街全体を包み込む温かな空気感が訪れる人の心をやさしくほどき、この地でのひとときが豊かなものになる、と、期待させてくれます。
そんな田辺の地で創業した菓子店「鈴屋」は、地元の人々はもちろん、旅人たちにも愛され続けてきた特別な場所。今回は鈴屋の看板商品「デラックスケーキ」の魅力をご紹介します。
鈴屋の創業背景と地元との深い絆

鈴屋の商品には、創業当初から変わることのない「真心」が込められています。その一つが、選び抜かれた原材料へのこだわり。保存料は一切使用せず、田辺の穏やかな気候で育てられ旨味が凝縮された梅、同じく地元の新鮮な鶏卵、爽やかな香りを放つレモン、華やかさを添える柚子など、自然の恵み豊かな素材をいかしています。
素材の良さを引き立てるのは、職人たちの丁寧な手仕事。ひとつひとつに心を込めて仕上げることで、「手作りにしか出せない僅かな味わいの違い」が生まれます。その繊細なこだわりは、味覚だけでなく、食べた人の心にもやさしい温もりをそっと届けてくれるのです。その揺るぎない思いは、創業当初から変わることなく、世代を超えて受け継がれています。
昭和レトロが香る、魅惑のデラックスケーキ

レトロ感漂う銀色の包装紙を開けた瞬間から、特別なひとときが始まります。
手のひらに収まる大きさの、どこか愛らしいその佇まい。ノスタルジックでお洒落な雰囲気をまとった銀紙をそっとめくると、ホワイトチョコレートの白いベールに包まれた、上品なケーキが静かに姿を現します。
可愛らしい見た目からは想像できない、ちょっと意外な味の世界。洋と和が絶妙に調和した味わいです。しっとりしたカステラ生地のスポンジケーキのやさしさに、白いんげん豆のジャムの奥ゆかしい甘さが重なり合い、ひと口ごとに、ほっとする満足感と静かな幸福感が広がります。ホワイトチョコのコーティングが醸し出すのは、洋のエレガンス。一方で、スポンジケーキとジャムが引き立てるのは、懐かしさと安心感を誘う、和のやさしさ。洋の装いと和の風味。ふたつの魅力が調和した、心まで満たされる一品です。
デラックスケーキが愛され続ける理由
デラックスケーキは、上品なパッケージに包まれた、ノスタルジックな魅力の詰まった逸品。丁寧に選ばれた素材と、まごころを込めた手仕事から生まれる奥ゆかしい味わいが、田辺を訪れた人々の心を温かく満たしてきました。
そうした誠実なものづくりの姿勢は、鈴屋のモットーである「公明正大な商売」にも通じています。創業から100年以上にわたり、地域の人々や旅人との間に築いてきた確かな信頼と絆。そして、変わることのないお客様へのまなざしと、守り続ける味への責任。その積み重ねこそが、鈴屋が長く選ばれ続けてきた理由のひとつです。
懐かしい甘さが広がるこのケーキは、自分へのちょっと贅沢なご褒美や、心を込めた贈り物に。そして、家族や友人との穏やかなひとときを彩るお茶菓子としてもぴったりです。銀色の包みを開けた瞬間に広がる、とっておきの時間。そのやさしい甘さが、またひとつ、心に残る記憶を刻んでくれます。

田辺市の魅力と鈴屋本店限定の特別なごほうび

鈴屋には、田辺の本店を訪れた人だけが手にできる、特別なお楽しみがあります。それが、「デラックスケーキのはしっ子」。
「はしっ子」という名の通り、デラックスケーキを作るときに切り落とされた端のことですが、味の完成度はそのまま。鈴屋の遊び心が感じられる、思わず手に取ってしまう一品です。地元の人にはもちろん、観光客にも大人気の商品。また、鈴屋では季節限定商品や地元田辺のフルーツをふんだんに使ったスイーツも展開しており、訪れるたびに新しい発見が待っています。
鈴屋を訪れる際には、田辺の町全体の魅力もぜひ堪能してください。熊野の古道を歩き疲れた後のひと休みに、甘いケーキを頬張る贅沢さ。町をゆっくり散策し、風景や文化に触れながら、心に刻まれる旅の一ページを作り上げてみるのはいかがでしょうか。
デラックスケーキは、田辺での特別な時間をひと口で思い出させてくれる、心を温めてくれる、そんなやさしい味わいです。
学生ライター:和歌山大学 半田、白竹、中本、吉田 (経済学部、システム工学部、教育学部)
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