2025.5.30

湯の町「道後」の魅力を訪ねて〜坊ちゃん時計と足湯で癒されるひととき〜

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レトロな商店街と「坊ちゃんカラクリ時計」の魅力

道後温泉駅で伊予鉄道城南線、路面電車を降りると、レトロな商店街が広がっている。観光客を出迎えるのは、放生園(ほうじょうえん)にある「坊ちゃんカラクリ時計」だ。 

坊ちゃんカラクリ時計は、道後温泉本館の建立100周年を記念して1994年に建てられたもので、その外観は道後温泉本館の振鷺閣(しんろかく)をモチーフにしている。8時から22時までの間、1時間ごとに(土日祝日、年末年始に加えて、3月、4月、8月は30分おきに)坊ちゃん登場キャラクターのカラクリ人形たちが、音楽に合わせて踊りを披露してくれるという仕掛けが施されている。 

小説「坊ちゃん」は夏目漱石が松山に教師として赴任した際の経験を基に執筆されたものだ。シニカルだが正直な内面を持つ主人公「坊ちゃん」の一人称視点で描かれ、多くの登場人物が辛辣かつコミカルにこき下ろされている。滑稽でこそあれ可愛げのない坊ちゃんのキャラクターたちだが、坊ちゃんカラクリ時計ではかわいらしい人形となっている。昨今のデフォルメ文化にも通ずるものがあり、原作を読んでいない観光客にも好評だ。 

使用されている楽曲は10時、正午、15時、18時に「この街で」、8時から11時までの間は「伊予万歳」、正午から15時までの間に「坊ちゃんのテーマ」、16時から22時までは「子守歌風伊予節」の4曲となっている。

全て愛媛や松山にまつわる曲で、曲の最後には坊ちゃんの登場人物、「マドンナ」の人形が観光案内のアナウンスを行うのも面白い。カラクリ時計の見物は、道後観光の目玉の一つとなっているので、少し引き返すことになっても、開演の時間頃に近辺にいるなら足を運んでみることをおすすめする。

道後温泉の白鷺伝説

街角に流れる温泉の湧き出し口の画像

道後温泉では、全部で9カ所の源泉かけ流しの足湯を利用することができる。最初に観光客を出迎える放生園の足湯は、養生湯(ようじょうゆ)。明治24年から昭和29年まで、道後温泉本館の霊の湯(たまのゆ)で使われていた湯釜を湯口として使用している。

紹介が後回しになってしまったが、坊っちゃんカラクリ時計と足湯のある一角は、かつて放生池※があったため放生園(ほうじょうえん)と呼ばれているのだ。

皆さんは道後温泉にまつわる「白鷺の伝説」をご存知だろうか。

宝永7年(1710)に完成した郷土地誌「予陽郡郷俚諺集(よようぐんごうりげんしゅう)」に「伝云、古此湯少し湧出して洴澼たり、鷺の足かたはなるが、常々来りて足を浸す、幾程となく平癒したり、故に此所を鷺谷と云」という記述がある。

これは「太古の昔、すねに傷を負って苦しんでいた一羽の白鷺が岩間から出る温泉を見つけ、足を浸したところ、傷が完全に治り、元気に飛び去った」という内容だ。これを見て不思議に思った人々が自分達も浸かってみたところ、疲労回復や病気療養の効果があり、頻繁に利用するようになったことが道後温泉の始まりとされている。 

伝説の真偽は不明だが、その泉質は確かだ。白鷺に倣って旅の疲れを癒し、松山観光を万全の状態で満喫するのも良し、本格的に道後温泉の別館や本館を楽しむ前のウォーミングアップ、いわゆる「湯通し」のような利用方法もいいかもしれない。 

※放生池(ほうじょうち):捕らえた魚類などを放してやるために設けた池

道後温泉商店街と足湯の楽しみ方

温泉を利用する予定がなくとも、道後を訪れた際は足湯のためにタオルを忘れないようにしたい。また、一度に利用できる人数は限られている。我々人間は白鷺のように飛び立つことはないため、慌てず焦らず、譲り合って利用することを心がけたいものである。 

道後商店街アーケードの入口と看板の画像

入口だけでも訪れる価値のある道後温泉商店街だが、その中についても紹介したい。

道後温泉商店街は約60軒もの土産物屋や飲食店が並ぶ商店街で、道後温泉駅と道後温泉本館を結ぶ、楽しいタイムトンネルのような空間だ。地元の人々からは「ハイカラ通り」の名前で親しまれている。 

坊ちゃんとマドンナの顔はめパネルが観光客を出迎えるハイカラ通り。やはり目に付くのは浴衣姿でそぞろ歩く人々の姿だ。道後温泉周辺の宿泊施設や店舗には浴衣のレンタルや着付けを行っているところが多くあり、和装で温泉街を散策することができる。そぞろ歩きは道後温泉の醍醐味ともいえるだろう。 

商店街内部、商店の軒先の画像

店舗の多くは9時から22時まで営業しており、土産物として愛媛の工芸の逸品である砥部焼の食器や、今治タオルのお風呂アイテム、坊ちゃんのキャラクターグッズなどを購入することができる。また、飲食店もとても充実しており、名産品のミカンを使ったスイーツやじゃこカツ、鯛めしを楽しむことができる。中でも注目すべきは、銘菓「坊ちゃん団子」。多くの店で取り扱われている。

愛媛の銘菓坊っちゃん団子が皿の上に並べられている画像

坊ちゃん団子は餡子の中に餅が入っている従来の団子とは逆の構造になっており、口に入れた瞬間に甘さが広がるお菓子になっている。菓子舗によって味がそれぞれ異なっており、暑い時期にピッタリの冷やし坊ちゃん団子やジャンボ坊ちゃん団子など、さまざまな特色がある。是非食べ比べてみてほしい。 

スタンプラリーで楽しむ「道後村めぐり」

近年では「道後村めぐり」というスタンプラリーが実施されており、30か所すべてのスタンプを集めて道後観光案内所内にある「道後村役場村民課」に提出すると、名誉村民の証書や道後温泉の入浴チケット、記念品がもらえるなど、観光客を楽しませる工夫が凝らされている。道後をめぐる内に観光客も村民として受け入れる、まるで道後温泉のような温かさを感じる取り組みである。 

道後温泉商店街は、ただ温泉と駅を繋ぐ通路ではなく、歴史と現代が融合した魅力的な空間であり、訪れる人々に癒しと楽しさを提供している。その道後温泉の外まで広がる温かい雰囲気と多彩な魅力は、これからも多くの人々を惹きつけ続けるだろう。 

ライター:大阪芸術大学 文芸学科 鎌田

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もっと知りたいあなたへ

道後温泉公式エリアガイド
https://www.dogo.or.jp/experience/dogo-haikara-dori/

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